夢の世界へ

□乱れた服を握り締めて
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セックスを終えた後の眠気は、
一種の麻薬のようだ。




自分の身体が浮いている様な、脳が甘く蕩ける様な、これ以上の無い幸せを感じる事ができる。


枕に顔を押し付けて、今すぐにでも閉じてしまいそうな瞼を薄く開けて考えてみた。


汗をかいて疲れたから眠い訳では無い…




例えるならば、
赤ん坊が母親の乳を飲み欲求を満たす様な、脳内でホルモンが大量分泌し、幸せを感じながら笑顔で眠ってしまうような感覚に似ているのかもしれない。



だからホラ、私は今にも眠ってしまいそうだというのに……貴方は何故私を追いて、一人シャワーを浴びているの?どうしてスーツを着て、時計をはめて、髪に癖がついていないか確認しているの?


貴方は私じゃ、

全てを満たせなかったの?





「今日も会えて嬉しかった。また来週、同じ時間に来る…」


変わらない別れ台詞を吐く貴方。先程まで私を悦ばせていたその指で、今度は私を傷つける。頬に添えられた右手の手首を引っ張ってしまいたい衝動を抑え、精一杯の笑顔で笑った、はずだ。


「うん、待ってるね」



私はいつだって…貴方の前では可愛い女の子で在りたかった。それが世間で云う“都合の良い女"だとしても、貴方を求めて止まない私は、そんな女にだって成り下がる。




「妻とは必ず別れる。……もう少しだけ待っていてくれ」


「ありがとう…でも、ゆっくりで良いんですよ?色々と大変なのは解ってるつもりですから、」

言葉とは残酷だ。
伝えたい事はもっと違うのに、私は“貴方を理解出来る良い女"として身を守る方法しか知らないのだから…



「凛音は、優しいな」


優しくなんか無い……


「私は…いつか貴方と暮らせるのを、楽しみに待っています」


嘘、嘘なの。


“いつか"じゃなくて“今すぐ"来てよ。地位も名誉も投げ捨てて、私を抱きしめてよ。


どうして?こんな筈じゃなかった…


いつから?こんな風に狂ったのは…






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