夢の世界へ

□儚く響け哀愁歌
2ページ/3ページ





「本当に、明日行くんですか?」

「しつこいな。リーダーの命令だから、行くに決まってんでしょ?」


「暁には、女性が二人居ますよね?どうして凛音先輩が選ばれたか…その意味が解りますか?」

「…何が言いたいの?」


「リーダーは色任務に小南さんを行かさず、凛音先輩を選んだ。…要するにリーダーにとって凛音先輩は、その程度だったって事っす」



――バシン!!


アジトの通路に乾いた音が響き、ジンジンと痛む自分の右手を震わせる。



「なんで、アンタに…
そんな事言われなきゃいけないのよ」


力いっぱいに殴った筈なのに、少しのズレも生じないお面に余計苛立ちが募る。


「昨日今日に入って来た様な新人に、私の事理解してる様な口を叩かないで!」


私はそのまま、トビに殴り掛かり…
夢中になって胸元を叩いた。


「凛音先輩…」



叩けば叩く程に目から温かい雫が溢れ、私を見下ろすだけで…抵抗しないトビに、また涙が零れた。


「なんでっ…!」



なんで、リーダーを好きになったんだろう。あの人には小南ちゃんが居るって、初めから解っていたのに。




それでも私は、


「リーダーの為なら、どんな任務でも完璧に成し遂げたいのっ…」


リーダーにとって、
私は暁の一員でしかなくても…


「それしか私には、

…あの人の為に尽くせないから」



「凛音先輩、僕は…」


「どうしようも無いくらい、好きなの!」






いつの間にか、トビの胸に顔を押し付けて泣いていた。それから、どれくらい泣いたか解らない。


気が付いたら自分のベッドの上で、時刻は日を跨がり朝になっていた…



「支度、しなくちゃ…」


着替えを済ませ、鏡に映った自分の顔を見て漏れた溜息。…なんて酷い顔なんだ。慌てて顔を洗い、まだ少し腫れた瞼の儘、部屋を飛び出した。





次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ