夢の世界へ
□儚く響け哀愁歌
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「本当に、明日行くんですか?」
「しつこいな。リーダーの命令だから、行くに決まってんでしょ?」
「暁には、女性が二人居ますよね?どうして凛音先輩が選ばれたか…その意味が解りますか?」
「…何が言いたいの?」
「リーダーは色任務に小南さんを行かさず、凛音先輩を選んだ。…要するにリーダーにとって凛音先輩は、その程度だったって事っす」
――バシン!!
アジトの通路に乾いた音が響き、ジンジンと痛む自分の右手を震わせる。
「なんで、アンタに…
そんな事言われなきゃいけないのよ」
力いっぱいに殴った筈なのに、少しのズレも生じないお面に余計苛立ちが募る。
「昨日今日に入って来た様な新人に、私の事理解してる様な口を叩かないで!」
私はそのまま、トビに殴り掛かり…
夢中になって胸元を叩いた。
「凛音先輩…」
叩けば叩く程に目から温かい雫が溢れ、私を見下ろすだけで…抵抗しないトビに、また涙が零れた。
「なんでっ…!」
なんで、リーダーを好きになったんだろう。あの人には小南ちゃんが居るって、初めから解っていたのに。
それでも私は、
「リーダーの為なら、どんな任務でも完璧に成し遂げたいのっ…」
リーダーにとって、
私は暁の一員でしかなくても…
「それしか私には、
…あの人の為に尽くせないから」
「凛音先輩、僕は…」
「どうしようも無いくらい、好きなの!」
いつの間にか、トビの胸に顔を押し付けて泣いていた。それから、どれくらい泣いたか解らない。
気が付いたら自分のベッドの上で、時刻は日を跨がり朝になっていた…
「支度、しなくちゃ…」
着替えを済ませ、鏡に映った自分の顔を見て漏れた溜息。…なんて酷い顔なんだ。慌てて顔を洗い、まだ少し腫れた瞼の儘、部屋を飛び出した。