夢の世界へ
□貴女の傍らに
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「は……ぁっ」
「く、凛音…っ」
「いいよ…一緒に、いこ――…っ!!」
欲望を凛音の中へと吐き出し、その儘もたれ掛かる様に倒れ込んだ。暗い室内は蝋燭の明かりだけが僅かに灯り、虚ろな目をする女を照らす。
宙ばかり眺める彼女がなんだか気に入らなくて、
火照った体をやや強引に引き寄せると、驚いた様に目をパチパチする表情が可愛い……あぁ、やっと僕を見てくれた。
「どうした、の?……イズナ」
「ん…只なんとなく抱きしめたかっただけ」
「ふふ、変なイズナ」
甘えん坊さんだね、そう言って笑う凛音は僕の胸に顔を埋め目を閉じる。
何故?もっと僕の顔を見てよ、どうしていつも、君は直ぐに目を逸らしてしまう?閉じた瞳で今、誰を見ている?
「じゃあ私、そろそろ――」
暫く抱き合った後、言いにくそうに凛音が小さな言葉で呟いた。いつもと同じ台詞、それを最後に僕から身体を離し帰ってしまうんだ。
着崩れが無いか鏡で確認している凛音を只眺める僕、羽織りを纏い髪型を直した姿からは、先程まで此処で情事をしていたなど微塵も感じさせない。
「…兄さんは、明朝まで帰らないよ?」
そしていつも、無駄だと知りながら引き止めてしまう。
「えぇ、でも私が遅れて帰る訳にはいかないから…じゃあね、イズナ」
扉が閉まり、一人になれば厭でも僕は僕を取り戻すのに…
翌朝、顔を洗いに部屋を出て歩いていると縁側に座る二つの影が見えた。
「昨日はお疲れ様…疲れたでしょうに、もう起きて平気なの?」
「凛音が起きているのに寝てなどいられん。それより凛音、少し痩せた気がするのは気の所為か?」
「ありがとう。でも…そんな事ないから、大丈夫よ」
並んで座る兄さんと凛音。お互いに見詰め合い、労り合っている……時折兄さんに見せるその笑顔は、僕に見せるモノとは全く別な物に感じた。
――夫婦なのだから、仕方ないのか