夢の世界へ
□所詮水と油だと
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「どうだ凜音、凄いだろう」
「うわー、これまた立派だね」
「何しろ一国一里というシステムを取り入れたのは、この火の国が初めてだからな。立派なら立派なだけ、目立って良い!」
「いやいや、隠れ里なんだから目立っちゃダメでしょ!」
「そう堅苦しいことを言うな。それより凜音、ここからが“うちはの居住地"だ」
町並み栄えた火の国中心部のすぐ側に、うちはの家紋が刻まれた門が見えた。ある程度瓦で囲わてはいるものの、それを目にした途端、本当に火の国と協定を結んだのだと、しみじみと感じさせられた。
「こんなに近くに造られたんだねー。忍連合に火の国との協定。一国一里なんて、なんだか夢みたい…」
「火の国との協定は、前々からうちはも千手も狙っていたからな。勝手が効くようにうちはの居住地も近くさせた。これは俺達の力が衰退しない限りは、揺らぐ事がないだろう」
「相変わらず強気だね。マダラは、」
「俺には、それだけの実力もついてくるがな。千手と手を組んで、火の国と協定を結んでも…俺はうちはを一つの忍一族として強く育てていくつもりだ」
「…そういう事は、軽々しく口にしてはダメだって前にも言ったわよね?」
「――そうだぞマダラ、」
まるで始めから居たような、そんな口調でスッと会話に入って来た男の声に一瞬だけ空気は冷たくなった。多分マダラの所為で…
後ろから感じる気配が近づいてくるにつれ、マダラの眉間に刻まれたシワが深くなってゆく。
「貴様はいつもいつも、一体何の用だ柱間?」
「久しいな凜音。また美しくなったのではないか?」
「…昨日も会いましたよね?」
「柱間、」
「そうだったかな?はっはっは、いやいや失敬。最近は物忘れが激しいようでな、」
「オイ柱間、貴様この俺を無視するとはどういう事だ。それとなんだその手は。さりげなく凜音の肩に触れるな、離せ」
「マダラ、居たのか」
「居たのか、だと?…ちっ、もういい。貴様と言い合っている時間さえ惜しい。さっさと用件だけ吐いて、地べたに額を擦りつけながら謝罪して帰れ。生まれて来てすみませんでした、とな」
「マダラ、仏の顔も三度まで。という言葉を知ってるか?」
「それがなんだ?…まさか貴様、自分を仏にでも例えているつもりか?おこがましい奴め、消え失せろ」
「…私は人より温厚な方だと自負していたが、もうやめだ。やめだやめだ、馬鹿馬鹿しいっ」
「なんだ柱間、やるつもりか?」
明らかに二人を纏う空気が怪しくなり、傍観するしか無かった私も、慌てて手を振り上げた。
「………凜音?」
「どうかしたのか…?」
「どうかしたのかじゃない!!二人共いい加減にしなさい!!木ノ葉の創始者としての自覚が足りな過ぎる!!柱間さんも、用件を伝えに来たのならさっさと言う!!!!」
項垂れる二人に葛を入れる快感は、多分私しか味わえないのかもしれない。
「す、すまん……凜音」
「…私とした事が、取り乱してしまった」
「解ってくれれば良いんですけど、結局柱間さんの用事は何なんですか?」
「あ、あぁ…」
何故目を泳がせるのだろうか?もしかして、私が聞いたらマズイ事だったり?
「すまんが、凜音は席を外して貰えないか?…本当に申し訳ないんだが」
「どういう事だ柱間。凜音が居ては言えない事なのか?」
「いや、なんて言えば良いのか…」
困った様に苦笑する柱間を前に、私はマダラの裾を引っ張って「大丈夫だよ」と呟いた。
「じゃあ、私はこれで。二人共…仲良くしなくちゃダメですからね?」
今思えば、二人に背を向けて歩き出したあの時から、なんだか凄く、嫌な予感がしたのかもしれない。