夢の世界へ
□色褪せた再会が
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マダラの眼が光りを失い始めてから、今日で二度目の夜を迎える。隣で俯せになり苦しんでいるマダラの背中を摩りながら、無力な自分を呪った。
安心させる様な言葉を掛けても、背中を摩っても、意味が無いという事は重々承知している。しかし、例えばマダラが着物を着替える時、箸を持つ時、僅かの差で掴み損なう貴方が、苦虫を噛み潰した様な顔を見せた時……ひどく胸が苦しくなるのだ。
一寸先は闇、
頭を過ぎるのは下らない事ばかりで、益々自分に嫌気がさす。今、私がしっかりしなくてはどうするんだ。
「……凜音、」
「!マダラ、何…?どうしたの!?」
「…抱きしめて、くれぬか?」
伏し目がちに顔を上げたマダラは、次々と流れ出す汗を拭おうともせずに呟いた。辛いのだろう、苦しいのだろう…マダラが私にそんな願いを頼むとは…
「駄目か?済まん、よく見えないのだ…」
手をふらつかせながら私を探すマダラに、心臓を鷲掴みされた様な感覚を覚える。
「マダラ、大丈夫。…私はここに居るよ?」
声が震えない様に細心の注意を払いながら、包み込む様に貴方を抱きしめて、トントンと背中を叩いた。
「凜音、心配を掛けて済まない」
「何言ってるの。夫婦なんだから、そんな事気にしないで…マダラは、早く元気になる事だけを考えてくれれば良いんだよ」
「…そうだな、済まん」
自分はなんて残酷な事を言ってしまったのかと、マダラの胸に顔を埋めながら…後悔した。
「泣くな…」
「泣いてないっ」
「凜音に泣かれると、俺はどうすれば良いのか解らなくなる」
「だから、泣いてないって…」
「俺は、うちはマダラだぞ?こんな事で、どうなる訳では無い。凜音は俺の妻らしく、ドッシリと構えてろ」
「……ふふ、ドッシリって、その表現はなんか嫌」
「そうだ、そんな風に笑っていろ。俺は凜音の笑った顔が一番好きだ」
「だったらずっと、見てくれなくちゃダメだからね…?」
「あぁ、解っている」
指先でなぞる様に、私の顔へと触れたマダラは満足そうに笑っている。それが嬉しくって、私は涙や鼻水を流しながら、きっと不細工な顔で笑っているんだろう。