ギブアンドテイク!
□チャンス到来!
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あいにく俺は視界が悪くても、寝起きだとしても喧嘩は充分できる。
しかし、割と痛い。
「…ってぇ」
寝ぼけた頭が一気に覚醒して、不機嫌を表す低い声が出た。
「す、すいませんでした。俺の不注意でっ…!」
けれど、きっちり頭を下げて即座に詫びられたら怒る理由なんてなくなった。
わざとじゃないくらいは分かる。
むしろ俯いたままの相手が心配にさえなってきて、
「…おい、立てるか?」
打算とかなしに優しく声を掛けたが、反応が鈍い。
どこかぶつけたのか?
「ほら、つかまれ」
手を差し伸べたのは、ごく自然の流れだったが。
何故かこいつの動きが止まった。
やっと反応したかと思えば、いきなり後退りされる。
「なぁ」
怯えているように見えて、少しだけ苛立ったが。
「っ…」
何か、違う。
「あぁ?」
まるで何かを抑えているような―――そんな感じ?
「ごめんなさいぃぃい!!」
するとそいつは叫ぶなり、くるりと踵を返した。
そして、大きく腕を振って全力疾走。
ホント、どんだけだよ…
「!これ、あいつの」
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