小説
□スノーライフ
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ひらひらと。鉛色の空から、冷たく白い雪が降ってくる。手の上に乗ると、呆気なく跡形もなく溶けてしまった。
冷たかった。冷たいのは自分の心か。それから自虐的に笑う。何、俺ポエマー?イタイ奴だ。
かじかんだ手を上着のポケットに突っ込む。帰ろう。
「キョースケ?何してんの」
振り向けば、幼馴染みの顔があった。いつもは外している、制服のボタンを閉めていた。
何と聞かれても、答えようが無かった。
「さみーだろ?戻ろうぜ」
「…ん。あぁ」
返事はしたものの足は動かない。
一度は歩き始めた幼馴染みは、俺を見ると小さなため息を吐いてた。
「…俺、ここにいるよ」
なぜか彼は少し怒ったような顔をした。
何言ってんだよ。バカじゃねぇの。そう言って再び歩きだす。
バカ、か。まぁ、バカなのかもしれない。
サクッと隣で雪を踏む音が聞こえた。思わず笑みがこぼれた。
「お前も充分バカだな」
「うっせー。お人好しって言えよ」
それだけ言って黙ったのは言葉の通りのお人好しだった。