小説

□僕の名前は。
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俺の名前は、斎藤 優(サイトウ マサル)だ。
実は俺はこの名前があまり好きではない。
個人的に【優】という字が嫌いだし、それに…。

「ゆ〜うちゃ〜ん!」

ギャハハと下品な笑い声を一緒に、同じ部活の奴らがやってきた。
俺は、そいつらを睨む。

「おいおい、怖いって。なんだか名前、呼んだだけじゃねぇか」
「うっせぇ!俺の名前は、マサルだ」
「だって、ユウとも読むじゃん?それにそっちのが可愛いし」

ギャッハハハと笑い声が響いた。
一応言いますが俺は正真正銘、男です。
年齢は16歳。高校1年。身長は176。部活はサッカー部。目つきの悪さは、この学校の誰にも負けない自信がある。勉強はキライ。彼女は最近、別れた。
それが、俺という男だ。男だッ!!

「つか、マジその名前似合わねぇって!お前、全然優しくねぇし!」
「むしろ厳しいし!怖いッ!」
「それは俺の優しさだ。馬鹿野郎」

軽く頭をはたく。「痛ッ!」と言うそいつの顔は笑顔が浮かんでいる。

確かに俺も、名前が似合わないとはいつも思っている。
どちらかというと他人を気遣う優しさなどあまり持ち合わせてなく、何かが特別すぐれているわけでも無い。
つまり名前にこめた願いのような息子には育ってないわけで…つっても、両親がどんな願いでつけた名前かなんて知らないんだけど。むしろ理由なんてないのかも…。

俺の両親は、母親が何事もテキトーでゆっるい人で父親の方はほにゃんとして常時笑っているような人だ。
そんな人達の間に生まれた俺は、母親似のするどい目つきをガッツリ受け継いだ。
父親のほにゃんとした部分は、あまり無い。似てるのは…骨格くらい?
ちなみに俺には妹がいて、妹の名前は理花という。賢く、花のように可愛い子に育って欲しいという感じの意味が込められた名前だ。
確かに彼女は賢く、そして父親似の優しい顔つきの子だ。

まぁ、俺の家族の話はこんなもんだ。

「あ。本物のユウちゃんじゃん!お〜い、ゆ〜うちゃ〜ん」

甘ったるい声で呼ぶと、ソイツは振り向いた。

松谷 優(マツタニ ユウ)同じクラスの女子だ。
ふわふわとした髪は肩までで、目はパッチリとしていて大きい。
全体的にふわふわとした子だ。

振り向いたソイツは、少し困ったかの様に笑うと騒ぎながら手を振っている奴らに小さく手を振りかえした。
しかしその中に俺がいるのが分かると、微笑みは消えてギロリと睨んできた。
おぉ、怖ッ!

「なんだか、マサルは嫌われてるよなー。いいなー」
「いいのッ?!良くねぇだろ」
「いいじゃん。少しでも特別に思われてるんだよ。俺らなんか、そこらへんのゴミ野郎くらいに思われてるんだしー」
「…そんなふうには思ってないだろ」

う〜ん…特別に、ねぇ。
特別嫌われてるんだろ?それってあんまし…。

恨まれるようなことをした覚えは俺に無い。たぶんだけど。
名前が同じってことだけで恨まれるはずもねぇし…知らず知らずのうちに何かやらかしたか?俺。
頭をかき、覚えてるかぎりの記憶をあさってみるが何も思い当たらない。
う〜ん、まぁいいか。
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