小説
□雨少年
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ピッチピッチ、チャプチャプ、ランランラン♪
何が【ランランラン】なのだろう。
こんな天気のどこが嬉しいんだ。
お母さんがお迎え??
あるわけないだろう。
ザーと音がする程、振っている雨。
こんな日だって言うのに僕は傘を忘れた。
出来れば濡れたくない。けど、忘れたから仕方が無い。
仕方が無く一歩、雨の中へと足を踏み出す。
「神田?」
声がして振り返ると、手を振りながら走ってくる女がいた。
その姿を見て、思わずため息がこぼれた。
「どうしたの?」
愛嬌のある笑みを浮かべながら聞いてきた。
「別に…雨、降ってるなぁって」
「もしかして傘忘れたの?」
「まぁね」
仕方がなく認めると、彼女は悪戯気に笑った。