小説

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トントン、と肩を叩かれ、振り向いた。

私の後ろに居たのは一人の女の子。

黒い髪は長くてさらさらだ。黒を通り過ぎて緑にさえ見える。大きな瞳も髪と同じの黒。

綺麗な人だった。

「あ…あの。これ落としましたよ?」

思わず見とれていると、彼女は不思議そうに言った。

差し出された手に握っていたのは、見覚えのある青いハンカチだった。

「あれ?私のだ。ありがとうございます」

「いえ」

可愛らしい笑みを浮かべると、彼女は小さく頭を下げて私を通り過ぎた。

歩いていくのを目で追う。

彼女は、ある一つの建物に向かっていた。
私の目的地でもある建物に。

もしかしたら…。

ハンカチを鞄に押し込んで、早足で彼女の事を追った。

「あのッ!!」

大声を出して彼女を引き止める。

振り返った彼女は、先ほどと同じように微笑んでいた。

「貴方も…1年生?」

「はいッ」

笑みを浮かべたまま彼女は頷いた。

それが、私達の始まりだったんだ。
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