小説
□境界線
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トントン、と肩を叩かれ、振り向いた。
私の後ろに居たのは一人の女の子。
黒い髪は長くてさらさらだ。黒を通り過ぎて緑にさえ見える。大きな瞳も髪と同じの黒。
綺麗な人だった。
「あ…あの。これ落としましたよ?」
思わず見とれていると、彼女は不思議そうに言った。
差し出された手に握っていたのは、見覚えのある青いハンカチだった。
「あれ?私のだ。ありがとうございます」
「いえ」
可愛らしい笑みを浮かべると、彼女は小さく頭を下げて私を通り過ぎた。
歩いていくのを目で追う。
彼女は、ある一つの建物に向かっていた。
私の目的地でもある建物に。
もしかしたら…。
ハンカチを鞄に押し込んで、早足で彼女の事を追った。
「あのッ!!」
大声を出して彼女を引き止める。
振り返った彼女は、先ほどと同じように微笑んでいた。
「貴方も…1年生?」
「はいッ」
笑みを浮かべたまま彼女は頷いた。
それが、私達の始まりだったんだ。