白麒麟

□中
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 ドーク街についた二人は、さっそく宿を探した。何件目かで、やっと、空き部屋があった。


「ふう。もう疲れちゃった」そう言いながら部屋を開け、すぐさまベットへ飛び乗った。白楡が周りを見ると、小さなベット二つに、小さな可愛い窓が一つ。その窓を、開け広げる。リンが箪笥の横にあるドアを開く。


「どうやら、お風呂とトイレですね」リンの背後でそう言った。


「小さい部屋……」ドアを閉め、ベットに腰をかける。


「そうですね。これほど、人が多いとは聞いてませんでしたからね」


「まったくだよ……あ、さっき買った本を読もう!」リンが包みを開けて、緑っぽい本を取り出し読み始めていた。


「私は、外に行きますが。絶対に出てはいけませんよ?人が来ても、無視ですからね?」


「はいはい。白楡は心配性なんだよ。私一人で大丈夫」リンがブイサインをして言うと、白楡はクスリと笑みを零して分かりましたと言い部屋を出て行った。本当に心配性だと思う。どうしだろうと、考えたが面倒になり本を開き読むのを再開した。


 獅子の物語。そう、リンが持っている本の題名だった。


「昔、むかし、ある所に、小さな、小さな獅子が生まれたって、ありきたりのような気がする」


 獅子は一人、悲しく何かを探していた。何を探している?と、どこからもなく、声が聞こえた。「何をさがしている?」と。
 しかし、獅子はそれを答えることはなかった。それよりも、探すことに夢中であった。


「獅子ね。何を探してるんだろう?」探して何かを得ることがあるんだろう。本当に何をみつけたいのか。そうリンは考えていた。


 獅子がやっと探し物を見つけた、それは白い麒麟だった。麒麟が獅子を眺め、その場を去ろうとした。そんな麒麟を追いかける獅子がいた。そして、そんな行動を起こす獅子に麒麟が尋ねた。なぜ、自分を追いかけるのかと。獅子は答えた。あなたに一度お会いしたかったと。そう言うと、クスリと笑らわれ赤くする獅子。


「探し物って、麒麟?」リンが集中して読んでいた。


「何を読んでるんです?」


「きゃああ!」驚き声を出すリン。


「す、すみません。驚かすつもりは、なかったんですけど」


「べ、別にいいんだけど。あ、お帰りなさい」微笑むと白楡も微笑を返した。


「お腹空きましたか?」


「ううん。動いてなかったし、そこまで空いてないよ?」そう言って、また本を読もうとするリンに対して本を奪った。


「ああ!まだ、読んでるんだけど!」本を奪おうとして、白楡に飛びかかるが、それをやんわりと受け止めた。


「はいはい。本はもういいでしょう?さあ、少しはご飯を食べて身長を伸ばしてはいかがですか?」意地悪だと心の中で罵って白楡の後を追いかけた。





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