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□日常記念日
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午後の授業も終わり、俺は荷物を持って教室を出る。
途中で竜崎や小坂田に名前を呼ばれたが、聞こえなかったフリをして家に急ぐ。
途中で由梨からメールが届いていた。
同じ家に住んでいるので、普通の恋人のように待ち合わせをしたいのだと。
可愛い由梨の頼みだ、断るわけにもいかない。
待ち合わせ時間と待ち合わせ場所を決めてある為、それに間に合わせなければならない。
家に帰って適当な私服に着替え、待ち合わせ場所に向かう。

「…げ、」

結構ギリギリかも。
仕方が無いから走る事にした。

「由梨っ!」

待ち合わせ場所にいた由梨の名前を呼べば、笑顔の由梨が振り返った。
この間買いにいったワンピースに身を包んでいる由梨。

「ごめん、待った?」

由梨は首を振る。
それ程待っていないという意味だろう。
俺が近づけば、由梨は嬉しそうに抱きついてきた。

「じゃ、行こうか」

『どこいくの?』

「考えてないの?行きたいって言ったの由梨じゃん」

『リョーマさんと行けるならどこでもいいの』

…ホント可愛い。

「じゃ、この間行きたいって言ってたケーキ屋でもいく?」

『いいの?』

「とーぜんでしょ」

由梨は甘いものが好きだから。
その店はタルトが美味しいらしい。

『リョーマさん大好き!』

「知ってる」

由梨は笑いながら俺の腕に抱きついてきた。
それから思い出したようにメモ帳を見せて来る。

『メモ帳なくなりそうだから、新しいの買いたいんだけど、いい?』

「当たり前でしょ。あとで買いにいこ」

『ありがと!』

他愛ない話をしながら近所に出来たという洋菓子店に向かう。
正直な話あまり洋菓子は好きじゃないけど、由梨の為なら仕方が無いだろう。

「食べすぎて太らないようにね」

俺の一言に、由梨はむっと頬を膨らませた。
ホント、なんで由梨ってこんなに可愛いんだろ。

いまなら先輩の言ってたバカップルってのがわかるかも。
まぁ、俺の方が好きみたいだけどさ。

じっと由梨を見つめれば、由梨は不思議そうに首を傾げて来た。
なんでもない、と首を振れば由梨は頷いて前を向いた。




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