Book

□Everything is up to you!
1ページ/1ページ





うぃん、と小さな音とともに扉が開かれる。
同時に暖かい空気と軽快な音楽が聞こえてきて、ざわざわと喧騒が広がる。
赤や緑を基調に飾られたモールは、クリスマスを意識してのものだろう。
あちこちのお店に「Merry X’mas!」の文字と、クリスマス仕様の飾りがされている。
中に入ったすぐの吹き抜けのホールには、2階にまで届くほど大きなクリスマスツリーが存在を主張していた。
きらびやかなクリスマスツリーは、みるだけで心を踊らせるようだ。
実際、家族連れの子どもたちはツリーの前ではしゃいでいる。

「……さて、と」

今日、大型ショッピングモールに来たのはほかでもない。
現在お付き合いさせていただいている彼に贈る、プレゼントを買いに来たのだ。
クリスマスプレゼントではない。
誕生日プレゼントを選びに来たのだ。
彼──越前リョーマは、12月24日生まれ。
そう、つまり、世間がクリスマスイブとはしゃぐ日である。
かくいう私も、彼と出会うまではクリスマスイブという認識しかなかったけれど。
日付的に、昔から誕生日とクリスマスをまとめられがちだったそうだ。
私の家族にはクリスマスに近い誕生日がいないから別々に祝っていたけれど、せっかく年に1度の特別な日をイベントとまとめられるのは悲しい。
だから、どうせならクリスマスではなく、誕生日のお祝いをしたいのだ。
そのため、仕事の休みである今日、リョーマからのデートの誘いを断ってまでショッピングモールに来たのである。
一緒に買いに来ることも考えたけど、どうせなら自分で考えて、贈りたい。
もし外したら、その時は後日改めて一緒に買いに行けばいいし。
誕生日プレゼントが何かを最初から知っているより、サプライズの方がいいかなって思ったらなんだけど。

でも、どんなプレゼントにしようかな。
あまり突飛なものを選んでも、印象には残るだろうけど、使えなければ邪魔なものになる。
かといって消耗品というのは味気ないし……。
どうせなら普段から使えるような、けれど消耗品ではないものがいい。
まずはどんなものがどんな値段なのか、色々なお店を見て回ろうかな。

すぐそばにある、クリスマスプレゼントに!というポップの踊る雑貨屋さんに入ることにした。

「あ、可愛い」

猫のクッション。
触り心地は抜群だし、値段もそれほど高くはない。
けど、リョーマは猫好きとはいえちょっと可愛すぎるよね。
男性向けというより、女性向けのプレゼントだろう。
友達にはいいかもしれないけど、リョーマのシンプルな部屋には似合わないよね……。
あと売っているものはぬいぐるみ、バスボム、ハンカチやタオル、可愛らしい食器類。
うーん、やっぱり雑貨屋さんって女性向けの商品が多い。
雑貨屋さんを見るのは好きだし、デートでもリョーマと見ることはあるけど……リョーマは別に可愛い物好きってわけでもないし。
やっぱり、ここにはなさそう。
プレゼント……難しいなぁ。
でも、せっかくだし、ちょっとでもリョーマに喜んでもらいたいから。
頑張って選ばなくちゃ!
次は……メンズもののブランド店でも見に行こうかな。
あまり高すぎず安すぎず、っていうのは難しいけど。
洋服、財布、時計にバッグにアクセサリー。
お店自体はたくさんあるし、商品自体も品揃え豊富だ。
でもだからこそ、リョーマの趣味を考えると選ぶのが大変だよね……。
うーん、確かちょっと前のデートで、新しい時計を買ってたし、それはやめておこう。
まずはメンズファッションのお店でもみようかな。
セーターとかパーカーとか、いいかも!
あとは部屋でも着られるスウェットとかジャージとか……ちょっとラフすぎるかな?

それにしても、リョーマって誰もが認めるイケメンだから。
何着ても似合うんだよねぇ。
緑がかった黒髪に、猫みたいな琥珀の瞳。
昔からテニスをしているわりに白い肌に、案外がっちりとした筋肉は誰もがうっとりするほどだ。
そんな彼と付き合ってるなんて、数年前の私からすれば想像もつかないだろう。
過去の私にいいたい。
数年後、あなたの隣には誰よりも素敵な人がいるのよ!って。

ショッピングモール内のお店をあちこち移動し、いくつかの商品をピックアップする。
店内では撮影禁止のところもあるので写真に撮るわけにもいかず、値段やデザインなどを簡単にメモ帳に書き写した。
近くのコーヒーショップで飲み物を注文し、飲みながらメモ帳をテーブルに広げてみる。

「んー……」

ピックアップしたいくつかの商品から、さらに選択していく。
これが案外大変な作業で、飲み物一杯で随分テーブルを占拠してしまった。
かなり時間はかかったものの、なんとかプレゼントを選ぶことが出来たのだ。
後片付けをして、店員さんの声を聞きながらコーヒーショップを出る。
あとはあのお店に行って、購入してラッピングしてもらうだけである。

私が選んだのは──

マフラー

キーケース
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ