恋の季節の1ページ
□Title of COLORS
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『トリコロール』
まさか、
しか言葉が出なかった。
嘘だ、
と呟いてみても、目の前の出来事は夢でも幻でもない、現実。
けれどアイツの表情は、まるで眠ってるみてぇに、安らかだっから。
「サンジ」
呼べばすぐにでも起きそうに見えて、俺はその名前を呼んでみた。
けれど、ピクリとも、本当に一寸も動かない。
触れた頬が、想像以上にひどく冷たくて、驚いた。
「……サンジ」
もう一度、その名前を呼んだ。今度は、色んな思いを込めて。
ありがとう、さよなら
先に逝くのは俺だと、疑いもしなかった。
幾多の生命を奪ってきた俺と、幾多の生命を生かせてきたアイツ。
それなのに、俺より先に逝くなんて、皮肉もいいところだ。
皆の心に生きてるだとか、俺が忘れない限り、アイツは永久に一緒だとか。
…そんな、単なる気休めを思うつもりはない。
だって。声も聞けねぇ、温もりも感じねぇ、その匂いに
包まれることもないのに。
アイツはもう、本当にこの世界から消えてしまう存在。
もう二度と会えないんだ。
そう思ったら、悲しくて淋しくて、俺は泣いた。
海に出て二回目の涙は、遠い昔に流した涙と、同じ味がした。
俺を見た蒼い瞳、流れる金糸、そして散った血色。
アイツの笑顔よりも先に
鮮明に浮かぶのは、あの三色。
きっと色褪せることのない三色
2009.05.21