恋の季節の1ページ

□2007年のサンゾロ
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『星より欲しい』


「馬鹿阿呆間抜け!
お前の顔なんか見たくねぇ。
もう帰ってくんな、馬鹿」

『ホント、ごめ…』

言いたいことだけ言って電話をぶち切った。
いや、言いたい文句はまだ山ほどあった。

間髪入れずに着信がきた。
誰が、出るか。

携帯は電源を切って、枕の下に入れた。もう寝よう。
起きてても、することはない。

仕事も休みだ。
そう、アイツが休めと言ったから休んだのだ。
なのに、自分は予定をすっぽかして仕事だなんて。
しかも当日の朝に、ドタキャンの連絡をよこすなんて。

『七夕は戻れるから、休み取ってよ。一緒に過ごそう』

…何が、一緒に、だ。
久しぶりだったのに。

決して、楽しみにしていた訳じゃねぇ。
約束を破ったのが、腹立つ。
振り回されたことが、気にくわねぇ。

「…馬鹿」

不貞寝を決め込んで、俺は昼前から、布団にもぐりこんだ――。

――…

……

「…ゾロ、起きてよ」

寝すぎて頭がボーっとする。
寝ぼけてんのか、サンジの声がする。

「うおっ」

いや、本物が目の前にいた。

何でサンジが居る?
回らない頭で考える。
仕事でしばらく帰ってこれなくて今日はドタキャンで…

「お前、最後まで聞かないで電話、切っちまうから。
遅くなっても戻るからって言うつもりだったのに」

久しぶり、と笑ったサンジを布団の中に引っ張り込んだ。

「約束破る方が悪ぃ。俺はもう今日は起きねぇからな」

「はいはい、ごめんなさい」

でも、七夕には間に合ったんだから、素直に喜んでよ。せっかく晴れてんだし、星見に行こうよ。
とサンジは耳元で言う。

俺は抱きしめられながら、答えた。

「…星より飯、用意しろ」

…いや。
飯より俺がいま欲しいもの。それが分かんなかったら、晩飯が美味くても、しばらく許してやんねぇ。












"You're my only shine star"
2009.07.12

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