恋の季節の1ページ

□2007年のサンゾロ
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『独占欲』


5月5日。

1年イチ、モヤモヤする日だ。

誕生日だってはしゃぐルフィに悪ぃから、嫌いな日だとは言い切らねぇけれど。
とにかく、モヤモヤする日だ。


ノドも渇いたし腹も減ったが、キッチンには入りたくない。
コックとルフィがいるから。

いつもの二人なら問題ねぇが、毎年、今日だけは違うと思う。

ルフィは満面の笑みで好物を平らげ、その料理を作るコックも今日ばかりは怒鳴らねぇ。
そんないつもと違うコックを見るのは、気分が悪ぃ。

たとえ誕生日でも、ルフィを甘やかすコックにイライラする。
甘えるルフィにも腹が立つ。



「ゾロー。遊ぼうぜー」

食うのに飽きたか、ルフィが船尾にやって来た。

一緒に馬鹿やる気にもなれず、俺は狸寝入り。
ルフィは悪くない。でもイライラする。顔を見る気もしねぇ。

しばらく無視してたら、諦めたルフィはしょんぼりと甲板へ戻って行った。

ルフィのしょんぼり具合に少し胸が痛くなる。
何やってんだ、俺は。
自分がイライラしてるから、無視するなんて大人気なさすぎだろう。


数分も経たねぇうちに、また船尾に客が来た。
目を閉じててもわかる、聞き慣れた足音。

「おらマリモ。光合成してねぇで、いい加減昼飯食いに来い」

俺は黙って寝返りをうつ。

俺はイライラしてんだぞ、と公言するのもおかしいが、イライラが伝わらないのも、シャクだ。

そんなことを考える俺の顔を、のぞきこむコックの気配。
その気配に目を開ければ、ニッコリ笑うコックと目が合った。

「なんだ、またヤキモチ?」

「違う。馬鹿」

ヤキモチじゃねぇ。
お前が甘やかすから、イライラするんだ。

「はいはい」

呆れたように笑って、コックは俺の頭を撫でる。

そうだ。それでいい。
そうやって、お前が甘やかすのは、俺だけでいい。








2007.07.29

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