恋の季節の1ページ

□2007年のサンゾロ
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『4月の馬鹿ップル』

エイプリルフール。
誰が決めたか知らねェが、嘘をついても許される日だとか何とか。
くだらねェこと考えたヤツがいたもんだ。

そのくだらねェ日に便乗して、コックをちょっとからかってやろう、と思った。

時計はちょうど、午前零時を回ったところ。4月1日だ。

明日の仕込みを終えたらしいコック。コーヒーでも淹れるんだろう、湯をわかしている。

その背中を見ながら、俺はひとりほくそ笑んだ。

からかい甲斐のあるコックは、きっと真剣に怒るか、拗ねるか…。
どっちにしても、楽しませてくれるだろう。


頭ン中で組み立てた計画通り、まずそっとコックの背後に回る。

「…サンジ」

滅多に呼ばねぇ名前を呼んで、

「何、ゾロ?」

振り向きもせずに作業を続けるコックの背中を、軽く抱きしめた。

「…愛してる」

「!?」

慌てたコックは、ものすごい勢いで振り返る。

普段の3倍増に目ン玉を見開いて、アゴが外れそうなくらいにクチを開けてる。
案の定の驚き様だ。

「冗談だ、馬鹿」

それから俺は、そう言って笑い飛ばしてやるつもりだった。
…が、できなかった。


なぜなら、ものすごい勢いでコックに押し倒されたからだ。
その勢いで、キッチンの床でしたたか後頭部を打つ。

「痛ぇ、馬鹿」

「やっとお前もその気になってくれたか!」

その言葉にハッとしてコックを見上げる。
やべぇ、目の色が違う。

「ちょ、誤解…」

俺の言葉は、熱烈なキスの嵐に遮られ、それ以上コックに届かない。

「おい、待てって、コラ」

「照れんな、今さら」

照れてねぇ!
いやマジ誤解!


ぎゃあああー


声に出せねぇ俺の悲鳴が、夜更けのキッチンにこだました…。




俺はもう二度と、エイプリルフールに嘘はつかねぇと――
いや、コイツにこの手の冗談は絶対言わねぇと、心に決めた。





2007.06.13サルベージ

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