恋の季節の1ページ
□2007年のサンゾロ
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『愛の投資』
2月14日 聖バレンタインデー。
何の日かってことくらい、俺だって知ってる。
女が好きな男にチョコやって、告白する日だろ。
まぁ、俺にゃ関係ねぇ日だ。
だって、俺もアイツも男だし。
今さら、わざわざ告白するような間柄でもねぇし。
だから、俺には関係ねぇ日だ。
関係ねェから、もちろん去年もやらなかった。
ふと、去年のコックの顔を思い出した。
俺が何もやるつもりも無ぇ、と解かったときの淋しそうな顔。
「え、チョコねぇの?」
「こーゆーのはな、義理何百個もらったって、嬉しくねぇの。本命1個あれば、それだけで十分なのに」
ブーブー文句言われたことも鬱陶しかったが、そのあとのコックのヘコミ具合は、マジで鬱陶しかった。
…小学生じゃあるめぇし、チョコもらえなかったくれぇで、そこまで落ち込むなよ。
そう言おうかと思ったが、ますます落ち込まれても困るから、やめた覚えがある。
今年もまた落ち込まれて、変な気を使う羽目になるのは、面倒臭ぇ。
また鬱陶しい思いすんのは御免だし。
恩売っといて、ホワイトデーに3倍返しもらうってのも、悪かねぇな。うん。
もちろん、お返しは酒で。
とびきり上等なヤツ。
そのための投資だと思えば、チョコやるくれぇ、何でもねぇさ。
決して、あのバカコックの泣きそうな顔を見たくねぇとか、ちょっと嬉しそうな顔がみたいとか、そんな理由じゃねぇぞ。
酒のためだからな。
「なぁロビン、チョコってどうやって作んだ?」
2007.06.21サルベージ