恋の季節の1ページ

□2007年のサンゾロ
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正月早々、わざわざ人混みに紛れに行く奴等の気が知れねぇ。
普段は見向きもしねぇのに、こんな時だけ参って、御利益もクソもあるわけねぇだろう。
ま、神が居れば、の話だがな。


『罰当たりな理由(わけ)』



初詣に向かう人の群れを眺めるのにも飽きた。
俺はタメ息をついた。
あのバカコック、呼び出しておきながら遅刻だなんて、いい度胸だ。

もう帰っちまおうか、と思った瞬間。

「お、お待たせ、ゴメン」

相当走って来たんだろう。
謝るコックの、息が荒い。

「遅ぇ」

「…マジ、ゴメン」

ま、そんぐらいじゃ怒らねぇさ。
正月だし。

「どうせ紅白見てたんだろ」

「いや、着物、着るのに手間取ってさ…。どう、似合う?カッコよくねぇ?俺」

ああ、何かいつもと違うと思ったら、服装か。
意外と金髪に着物が似合ってカッコイイ。

…なんて俺が思うわけねぇだろ。
思っても、言うわけねぇだろうが。馬鹿。

「暗くて見えねぇよ」

「わ、酷ぇ」

折角着てきたのに、と、ブーブーふくれるコックは無視して。

「…ほら、行くんだろ」

言いながら、俺は乱暴にコックの手を取った。

だって、人混みで迷子になると面倒だし。

暗くて見えねぇから、手も繋げる。



――新しい年の初め。
俺は、手を繋ぐためだけに、初詣に行く。








2007.06.21サルベージ完了

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