恋の季節の1ページ
□2006年のサンゾロ
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しとしとと降り続く雨。どんより曇った空、じめじめした空気。
何となく気分の滅入る、梅雨の時季。
だがそんな季節も、嫌いじゃねぇ。
「んなくっつくな、暑苦しい」
隣を歩くゾロが、不意に声を荒げた。
俺は即答する。
「やだね。離れたら濡れちまうもん。それにこれ俺の傘だし」
天気予報を見ねぇゾロは――いや見ててもきっと、傘なんて持ち歩かねぇんだろうけど。
だから、雨が降りゃあこうして相合い傘。
ふたり肩を並べて、堂々と街を歩けるって訳だ。
「俺が風邪ひいたら、お前、介抱してくれんの?」
俺はそれも良いけど、と、ニヤニヤしながらゾロを見た。
チッと舌うちしつつ、ゾロは、傘の柄を俺から奪ってひとこと。
「んな訳ねぇだろが。勝手に野垂れてろ」
冷たい視線をくれながらも、俺が濡れねぇように傘を傾けてくれるゾロ。
「愛がねぇなぁ、おい」
そう言って、唇を尖らせては見せたものの。
俺はしごく上機嫌で、ゾロに身を寄せた。
また来週も出かけような。
『梅雨の週末』
2007.06.13サルベージ