恋の季節の1ページ

□2008年のサンゾロ
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『名台詞』


「おめでとう、ゾロ!」

そう言って、俺は綺麗な包みを差し出す。
続けて俺は、カッコ良く笑ってみせる。

「誕生日プレゼント。お前に似合いそうだと思って」

…これじゃ、普通過ぎるな。

「俺は今日という日ほど、神様に感謝してぶっ」

…噛むよーな台詞はイカンだろう。カッコ悪ぃ。

「あー明日、何つって渡そう」

プレゼントの包みをそっと机に置いて、俺はため息をひとつ。

何かもっとインパクトのあるセリフで、ゾロのハートをガッチリ掴みたいのに。

幾度か予行演習してみたけど、気のきいた言葉が思い浮かばない。

そうこうしてるうちに、時間ばかりが過ぎて行った。
ふと時計を見れば、23時42分。

「うわ、もーこんな時間!」

慌てて携帯を手に取る。
もちろん、誕生日おめでとメールを、24時ジャストに送るためだ。

考え抜いたおめでとメールは、もう送信するだけ。
あと18分、その瞬間を逃さないように、スタンバイしていなければ。

(あいつ、まだ起きてっかな)

(そうだ!今からなら間に合う)

俺はプレゼントの包みと携帯を手に、コッソリ、けれど大慌てで家を飛び出した。
目指すはゾロの家。


――23時58分。
到着記録、更新かな。
荒い息を整えながら、携帯を開いた。

起きてたら、窓開けて、外見て

メール文末にそう付け加えて、24時ジャスト、送信。

しばらくしてガラリと、窓の開いた音がした。

「ゾロ!」

「な、お前…」

驚いた表情のゾロに向かって、俺は包みを放り投げた。
ナイスキャッチ。

「誕生日おめでとう!
それ、誕生日プレゼント」

ゾロは目を丸くして、口をポカンと開けていた。
よし作戦成功!

台詞が駄目なら、演出で。
サプライズな誕生日プレゼントになっただろう、と満足して、今来た道を戻って数歩。

携帯が鳴った。








――11月、誕生日。






そしてきっと
忘れられない夜になる。


2009.10.25

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