恋の季節の1ページ

□2008年のサンゾロ
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『今年もヤベェ』



この季節は――夏は、ヤベェ。

当たり前だが、夏は暑い。
故に薄着で、素肌が惜し気なく露出される季節なワケで。
さらに体育の授業はもっぱら水泳で、もちろんみんな水着なワケで。

それはもう、かなりヤベェ。

水着なんて薄布1枚、ほぼ裸。
ちょっと日に焼けた、筋肉質なゾロの身体が、バッチリ拝めちまうじゃねーか。

まるで彫刻のような、綺麗なゾロの身体。

健全な男子高生は、それを夜のオカズにしちゃったりしてるワケで。

(あぁ直に触ってみてーなぁ)



「サンジ、大丈夫か?」

記憶の中の水着ゾロと戯れていたら、隣の席のリアルゾロがこっそり声を掛けてきた。

何が?と、聞き返す前に気付いた違和感。

――俺、鼻血タレてやんの。

「センセー。ちょっと保健室」

てなワケで、思春期真っ只中な俺の粘膜は、毎日のように切れていた。
(お陰で身体の弱いヤツと思われて、水泳はほとんど見学)

年々モテなくなってんのは、多分、この鼻血のせいだろう。

でもいいんだ。
夏最高。プール最高。

どうせ叶わぬ恋だし。
せめて妄想くらい、それで鼻血くらい、許してくれてもバチは当たらねぇよ。

(もしもこの思いが叶ったら、笑い話にできるかなぁ)

チラリとそう思ってから、

(いや、今でも十分笑い話か)

気付いて、苦笑した。

どうせ叶わないと分かってるのに、叶ったらなんて、つい想像しちまう。
そして妄想から醒めた瞬間、泣けてくるんだ。

鼻に詰め替えるために取ったティッシュで、滲んできた涙も拭う。
喉の奥で、塩味のかわりに、鉄の味がした。




――7月、真夏の授業中。







我に返った瞬間、淋しい現実。
2009.07.05 Renew

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