恋の季節の1ページ

□2008年のサンゾロ
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『今日の魚座のあなた』








「げっ」

今朝のテレビの占いじゃ、運勢よかったのに。

登校途中、ゾロを迎えに行く前に寄ったコンビニにて。

「誰だよ…こんな朝っぱらから傘パクるヤツは…」

急に降り出したならともかく、ずっと雨降ってたのに。
どこのどいつだ、傘持たずに出かけたアホは。

朝から最悪だ。
占いなんて信じねェぞ、もう!



てなワケで俺は、ずぶ濡れで、ゾロん家に登場した。

「おう、おはよ…って何やってんだ、お前」

玄関先でゾロが目を丸くする。

「とりあえず家、上がれ」


借りたタオルで全身を拭きながら、俺が事情を説明すれば、

「お前、馬鹿っじゃねェ?
傘買うとか、俺に電話すりゃ、良かったろーが」

と、ゾロはバカにしたように笑った。
同情なしかよ!

でもまぁ、熱いココアをいれてくれたので、それは許そう。
雨で冷えた身体に、ココアの熱さとゾロの優しさが沁みる。
こんな小さなやりとりが嬉しい恋する乙女な、俺。


「もう遅刻だな。どうする?」

ゾロがふと時計を見上げて、つられて見れば、余裕で遅刻。

このままサボっちまいたい。
けれどゾロの内申点のために、真面目に登校することにした。

ゾロの古い制服を借りて、1本の傘をふたりで差して。
誰もいない通学路を、一緒に歩きながら。

俺の頬は弛みっぱなしだった。

「占い、当たったかも」

憧れの、相合傘で登校。
これをハッピーと言わずして、何て言うんだ。

「何だ?」

「何でもねぇー」

学校に着くまで、この雨が止みませんように、と俺は心の中で祈っていた。








――6月、梅雨のある朝。





占いに一喜一憂、乙女サンジ君
2009.06.08 Renew

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