恋の季節の1ページ

□2008年のサンゾロ
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『スパイスクッキー』


俺とサンジ。
何もかも、正反対に違うけど。
毎年この日は、更に実感させられる。

受験の最後の追い込みで、ホントはそれどころじゃねぇハズなんだけど。
皆、勉強も忘れて、ちょっとしたお祭り騒ぎだ。

まぁ、俺はチョコ苦手だし、好きな女もいねぇから、関係ねぇけどな。

…負け惜しみじゃねぇぞ。
サンジは山程もらうのに、俺は義理チョコ2・3個がせいぜいだからって。


今年も大収穫で、サンジは上機嫌。

「お前、もらいすぎだろ」

あんまり嬉しそうなのにちょっとムカムカして、俺は唇を尖らせた。

「欲しい?」

サンジが意地悪く聞いてくる。俺のチョコ嫌いを知ってて。

「いらねぇよ」

「可哀想だから、1個お裾分けだ。お前のは没収する」

それれだけもらって、まだ欲しいのか、コイツは…。

「チョコ食いすぎで、また鼻血でるぞ」

「どーせオマエ、チョコ食わねぇんだろ。だから交換だ。
これは甘くねぇから食え」

俺に包みを押し付けながら、サンジが言い切る。
その言葉に、俺はおとなしくその包みを受け取った。

去年もその前も、"交換"させられた、包み。
3年間連続、俺の好きな青色のラッピング。

中身はやっぱり今年も、甘さ控え目のスパイスクッキー。
手作りの香りがぷんぷんする。


…3年目で、やっと確証が持てた。これはサンジからのバレンタインだ。

素直に「自分から」って言ってくれりゃあ、俺だってちゃんと礼が言えるのに。

サンジはたまに、回りくどいとこがあるけれど。
全くコイツは、何がしたいんだか。

旨いから、理由は追及せずに、食ってやるけど。

「なぁ、来年もコレ食いてぇ」

「ああ、また作って…」

言いかけて固まったサンジに、俺は意地悪く笑ってみせた。

毎年お情けでもらう義理チョコよりも、俺はこのクッキーだけでいい。









――2月、バレンタイン





だんだん繋がっていく感じ

2009.10.25 Renew

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