海賊

□三秒で世界は変わる【14n】
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思い出話に花を咲かせる。

その笑顔に見惚れてしまう。

一緒に過ごすだけで、一瞬一秒が、こんなにも幸せだなんて。
今まで思ったこと、なかった。


隣にいるときに、気を緩めたら溢れてしまいそうだ。
喉元まで出かかった言葉を
――好きだという言葉を、飲み込む。


知って欲しい

自分の気持ち


もっと知りたい

ゾロのこと


でも

この緩やかな時間を失うのが、

隣に居られなくなるのが怖い。



何だか今夜はとくに、ずっとこのまま居たかった。

昔の話をしてたからだろうか。


「もう、寝るか?」

そう切り出すのは、いつもゾロの方だ。
俺があくびをかみ殺し始めた頃を見計らって。

眠たいし、寝なきゃ明日に差し支えるとはわかってるけど。
それに明日も会えるのに。


ほんの数時間でも一緒に居られないのが、淋しい。


「ああ。もう遅いしな」

でも、無理に引き止める理由もないし、やっぱり眠たい。


「んじゃ、おやすみ、ゾロ」

いびきが響く男部屋に戻って、毛布にもぐりこむ。
この時だけは、素直にゾロの名前を呼ぶことにしてんだ。

「ああ、オヤスミ」

いちにちの終わりに聞く声が、ゾロの声。

たとえどんな日だったとしても、それだけで幸せな日だったと思えるんだ――




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