海賊
□ひざまくら 【5n】
1ページ/5ページ
「ゾーロ。好きっ」
まどろむゾロを見てたら、堪らなくそう言いたくなって、俺はゾロに抱きついた。
「…ああ」
ゾロは微かに笑って、俺を抱いたまま、身体を起こす。
毛布がはらりと落ちて、裸の上半身が露になった。
知らぬ町の、安宿。
――情事の後。
閉めきられたカーテンの隙間から、夕陽が柔らかく差し込んでいた。
真昼間から情事に溺れるなんて――不道徳、不謹慎、等々と。後ろめたい気も、多少はあったんだけど。
それよりも、久しぶりの上陸で――つまり、久しぶりの二人きりで、好きなヤツとイチャイチャしてぇって気持ちの方が、クソでけぇに決まってるだろ。
と言う訳で。
島に着いて早々、俺とゾロは安宿の一室に籠った。
それが昼前。
そして、もう、日暮れ。
光陰矢の如し。時の経つのの、何とはやくて無慈悲なことか。と、俺はつい溜め息を洩らしていた。
「ん、どした?」
気付いて、ゾロが問う。
「いや。…もっと一緒に居てぇなぁ、と思ってさ」
「…馬鹿。いつも一緒だろが」
優しく笑って、ゾロは俺の髪をくしゃっと混ぜた。
それが嬉しくて、俺はゾロの胸に顔を埋めた。
愛し合った後はゾロも俺も、とても素直になれる。
今だって、互いの体温を分かち合うみてぇに、ぴったりと寄り添ってんだぜ。