海賊

□sweet sweet kiss 【1n】
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「どーしてかなァ」

不意にサンジが呟いた。
その言葉に、俺は顔を上げる。

「何が?」

ニコニコと満面の笑みをたたえたコックが、こっちを見てた。
…気持ち悪ィくれぇの、笑顔。

「お前のこと、クソ愛しくて、たまんねぇのが」

「ぶっ!!」

飲んでた酒、思わず吹き出しちまったじゃねぇか。
もったいねぇ。

「ゲホゲホゲホ」

知るか。
と言ってやろうと思ったが、吹き出した拍子に酒が気管に入って、俺は盛大にむせた。

「んな照れんなって」

アホコックがまたアホ発言だ。

「ゲホゲホゲホ」

誰も照れてねぇ。
と言うつもりが、俺はいまだにむせていた。

「大丈夫か?」

心配する素振りをチラッと見せたものの、サンジはさらにほざき続けた。

「お前も俺のこと、好きで好きでたまんねぇ、とか、思ってくれてんの?」

「ぶっ!!」

ようやく落ち着いた気管が、またむせるとこだった。
何とか耐えて、俺は冷ややかに答えてやる。

「寝言は寝て言え」

「寝言じゃねぇよー。マジメにさァ」

「ああ、マジメだぜ?」

「ひでぇ!お前、俺のこと好きじゃねぇの?」

分かってるクセに。

泣きそうな口調の割に、目は笑ってやがるから。

コイツは、俺の気持ちなんざ、分かってて聞いてんだ。

だから俺はわざと答えてやる。

「ああ、好きじゃねぇな」

俺がこう答えた後に。

「ゾロの冷血漢〜!!」

嘘泣きするお前に、

「愛してんだよ」

ってちゃんと言ってやるって。
キスしてやるって。

分かってるクセに。





――fine







2006.04.21 ひよこ拝



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