海賊

□三秒で世界は変わる【14n】
1ページ/15ページ



明日の仕込みを終えて、一息。
夜のメリー号は静かだ。


ちょっと前までなら、さっさと風呂入って寝ちまってたが、最近は夜更かしすることが、多くなった。

寝るのがもったいないと、気付いたから。


軽いツマミを皿に盛って、グラスを出して。
また洗い物がでるけど、苦じゃねェ。
――むしろ、楽しみな時間だ。


晩酌のセッティングを終えたのを見計らったように、キッチンのドアが開いた。
軋んだ音が、キッチンに響く。

「仕込み終わったか?」

ドアからひょっこりと、のぞく緑頭。

毎日顔合わせてんのに、見飽きねぇ。もっと見てたいと思う。
愛想もない、可愛くもない、野郎のツラなのに。

「ああ。…飲む?」

「って、準備万端じゃねぇか」

笑って、テーブルに着くゾロ。俺も向かいに腰を下ろす。


一緒に酒を飲んで、他愛ない話をする。
密かに最近、俺のお気に入りの時間だった。

想い人と過ごせる、静かな夜。



気が付けばゾロに惚れてた。
気持ちが大きくなるにつれ、きっとゾロに対する自分の態度も、変わって来たんだろう。

喧嘩が減ったと思う。
些細なことでイライラしなくなった。

そのせいか、ゾロが優しくなったと思う。
隣に居ても、出逢った頃のような、あの一触即発な雰囲気は、漂わなくなった。

あの頃、何であんなに喧嘩ばかりしていたのか、もう分かんねぇな。

そんなに遠くないはずの過去。
あの頃を振り返るたび、バカバカしくて、笑っちまう。

ほんと下らないことで喧嘩してたな。
思い出に浸る俺。
怪訝そうな視線をくれるゾロ。

「嬉しそうだな。いいことあったか?」

「いや、思い出し笑い」

嬉しいのには違いない。
お前と居れるだけで、これ以上ねぇくらい、嬉しいさ。



_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ