無題

□故ニ我アリ【1n】
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『故ニ我アリ』





*Sanji side*


変わりない朝の光。
きっと今日も“普通の一日”が過ぎていく。

新聞を広げてみれば、一面は、どこかの誰かが殺された例の件。

それが良かったのか悪かったのかなんて、おれにはわかりやしねぇ。
ただ悲しい思いをしたヤツがいるんだろうなと想像して、明日にはもう忘れてる。 
所詮どこの誰が殺されようが、関係ねぇヤツは無関心、ついでに弱者は見殺し同然。
それが間違いだとは言わねぇが、だからって正解だとも思えない、そんな世の中。

現におれは、どこかの誰かがおまえじゃなくて、心底ホッとしてるクソ野郎だ。
こんなおれに誰かを裁く資格なんかあるはずがない。

新聞、隅々まで読んだけど、それらしき記事は載ってない。おまえは無事に昨日を生き長らえたんだろう。
ということは、どこかの誰かが死んだのか。おれに関係のない、誰かが。

まったく世の中は悪循環で出来てると思う。まるで大きなその渦の中で、おれはちいさくて無力だ。
そんなおれに何かできるんだろうか。
なんてしおらしく考えてみても、結局何も出来やしねぇと思い至っておしまいだ。

皆が本音で付き合って、誰もが笑って暮らせる日が来れば、武器も争いもない世の中になれば、毎朝おれは新聞を隅々まで読まなくてもいい。

けれど人間が人間である限り、どっかの天才がど偉い発明でもしてくれねぇ限り、それは夢物語。
悲しいかな、おれは新人類でも天才でも何でもない、ごくごく普通の人間だ。

そんなおれにできることといったら、毎日毎日、飽きもせずおまえを思うことぐらい。
だから毎日毎日おまえを思う。 
思い続けて、シジイになって、死んだらどうかわかんねぇけど、いまわの際までそのつもりだ。

贅沢言うなら、おれとおまえと一緒に一生過ごせればいいのに、なんて思ってる。
それがそのうち普通の日々になっても、それが幸せじゃねぇ筈がない。

お前のため。
お前が生きる明日のため。
それはお前を愛するおれのため。
何も出来ないおれは、平和を思い続ける。







真面目に世界平和を考える時って。


2006.11.20
2011.11.14改


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