忍者のたまご‐現パロ部屋

□春色キスはメントールの味
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――――♪

携帯のアラームで頭の中を揺さ振られ、のろのろと体を起こす。今日は留三郎と出掛ける予定だ。時間を見たら09:38。ちょっと急がないと、と思いながら出掛ける支度を始める。
着替えを済まして、少し朝ご飯食べよう…と思いながら台所へ降りた瞬間、くしゃみを1つ。

――あぁ、また今年も悪魔の季節がやって来た。


『春色キスはメントールの味』


小さな菓子パンとコーヒー一杯で軽くお腹を満たして、出掛ける為に車庫に出る。外に出て見ると昨日降った雨が嘘のように、今日はお日様が照っていた。絶好のお出掛け日和。だけど、僕の心は土砂降り並みにどんよりと曇っていた。

春が近づいた雨上がりの日。僕に春一番を告げるのは桜の蕾でも梅の開花でもなく、杉花粉の襲来。
いくら天気が良く晴れ晴れとしていようと、母さんが今日は乾きそうねよかったわ、と気分良く洗濯物を干していようと、僕は決してよかった何て気持ちにはなれない。
あれは悪魔だ、敵だ、天敵だ。何処やかしこに大量に浮遊していて、目に見えないのをいいことに、服にくっついて部屋の中にまで入ってくる。少しづつ暖かくなって過ごしやすくなって来て、そりゃあ確かに少しは嬉しいけど、一番苦しいのもこの季節なのだ。まず、顔の穴という穴が痒くなる。目なんて眼球を取り出して洗いくなるし、喉も手を突っ込んで掻き毟りたくなる。

―くしゅん!

車に乗り込んでエンジンを掛けたところで本日五回目のくしゃみ。今日は結構飛んでそうだ。毎朝の天気予報と一緒にやっている花粉情報を見るまでもない。朝起きたら今日の花粉はどのくらい、なんて大体分かる。もう花粉探知機だ。

車庫を出れば太陽光が窓越しに差して来て、車の中は暖房なんて掛けなくても十分暖かい。むしろ、若干暑い。
大丈夫、家を出る前に薬は飲んだんだから、留の家に着くぐらいには効いてくるはず。――それでも僕は、パワーウィンドゥのスイッチに手さえ振れず、留三郎の家まで車を走らせた。


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