忍者のたまご‐現パロ部屋

□春色キスはメントールの味
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「ねぇ留さん、飴取って」
「ん、」

がさがさと袋を破って留が渡してくれた飴を、口の中に放り込む。

留の家に向って、留を隣に乗せて。出掛け先へ向う車の中。今日は久しぶりにカラオケに行こうという話になって、市内に向かって車を走らせている。
その車の中でこんな会話をこの30分の内に何回した事だろう。さっきから引っ切り無しに飴を口にしているのは、別にお腹が空いているわけでも、甘い物が欲しいわけでもなく。鼻を通す為と言う何とも情けない理由。
その飴は、鼻詰まりを解消してくれるという、お菓子とはまたちょっと違ったどちらかというとのど飴とかに近い部類で。風邪やら花粉症やらのこの時期になると、いつもうちの店に大量に入荷して来るのだ。味も色々あって中々美味しいけれど、その目的故どうしてもメントールが結構効いている。

カラオケの近くの人通りが滅多にないコインパーキング。時々利用しているいつものそこに車を止める。

「伊作、今日は薬飲んで来て無いのか?」
「ん?飲んでるよ?でも今日のはちょっと弱いやつなんだ」

いつものやつも一応持って来てはいるけど、と薬の箱を取り出す。

「でもねぇ、きついやつは口乾くんだ」
「口?喉じゃなくて?」
「うん」

頷いて視線を下に落とす。半分睨め付ける様な僕の視線の先は、箱の裏側の成分表だ。

『ベラドンナ総アルカロイド』
鼻水や涙などの外分泌を抑制してくれる成分。効き目の強い一般鼻炎薬には大抵これが入ってる。花粉症の薬としての効果は良いが、難点が1つ。“分泌物を抑制する”為、唾液の分泌まで抑制してしまうので、どうしても口が乾くのだ。暑いときに喉が乾くあの感覚ではない。唾液が殆ど出ず、口の中がからっからなのだ。
カラオケに行くと言うのに、唾液が出ないのはつら過ぎる。

「俺にも一個くれよ」
「うん、いいよー」

鞄から飴を二個取り出して、一個留三郎に渡す。もう一つはそろそろ無くなりそうな僕の分。
少し舐めた後、留三郎は分かりにくく顔を潜めた。

「これ…結構メントールキツイな」
「まぁ、お菓子として食べるにはちょっとね」

そう言うと車を降りようと鞄を掴む。ノブに手を掛けた瞬間、伊作これやる、と言う言葉と一緒に体を引かれ、口が塞がれた。そしてすぐに生温い感覚と共に食べなれた味の固形物が転がって来る。
鼻も微妙に通りが悪く、この上口まで塞がれては少々息苦しくもあったけど、人通りも全く無かったし、その目的はすぐに読み取れたので今更拒む理由も無く。そのまま大人しく口付けとキャンディを受け取る。

すぐに放れたそれに多少の名残を感じつつ、まだ口がスースーする、と言う留三郎に苦笑しながら、僕ら目的の場所へ足を向けたのだった。


‐終


花粉症で苦しむいさっくんが書きたかったのです。前半いさっくんが思ってる事は私が思ってる事まんまです。花粉は悪魔だ!←
現代っぽくカラオケにしてみましたが(歌ってないけどね!爆)、留さんは歌上手いと思います。いさっくんは…まぁ、中の下ぐらいで。

いつもいさっくんが運転してますが、留さんも免許持ってますよ。ただ留さん所有はバイクなので、遠出には向かないのです。(この辺が社会人いさっくんと学生留さんの違い)


*2009.3.3

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