忍者のたまご‐現パロ部屋

□友達が来てくれました〜仙蔵編〜
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(えーっと、これが10個で、こっちの薬が…)

いつものように、レジ横のカウンターで今日の納品分の検品作業をしていた時の事。

「伊作」

よく知った声に顔をあげると、目の前に幼なじみが立っていた。

「あ、仙蔵。いらっしゃい!買い物?」
「ああ、痛み止めが欲しいんだが」
「どっか痛いの!?頭?お腹?」
「いや。今すぐにと言うわけじゃない。一応常備薬で置いておこうと思ってな」
「そうなんだ!よかった。」

こっちの棚だよ、と、レジから出て鎮痛剤のコーナーに案内する。

「この段と、この段が鎮痛剤だから」

そう言って僕が指す棚には寒色系のパッケージが何種類か並んでいる。鎮痛剤や睡眠導入剤に寒色系のパッケージが多いのは、鎮静色だからだそうだ。

「結構色んな種類があるんだな」

仙蔵はいくつかの箱を手に取り、裏やら表やら側面やらを見ている。

「どれがいいんだ?」
「うーんと、ちょっとした痛みとか常備薬ならこれぐらいで十分だけど、効き目としてはこっちの方がいいよ」
「…そうか。これは?最近CMで見かけたが」

仙蔵の手には最近、新処方!とかで発売された鎮痛剤があった。結構メジャーな製薬会社で、CMもちょくちょく見かけるやつだ。

「ダメじゃないけど結構きついから、胃薬を一緒に飲まないと、胃荒れるよ?」

それは面倒だな、と、箱を棚に戻す。ちょっと迷って仙蔵は僕が二つ目に差し出した箱を取った。

「これにする」
「うん、じゃあレジするね」

レジのカウンターを挟んで、ピ、と機械音をさせる僕と、がさごそと鞄から財布を出す仙蔵。

「勉強してるんだな」
「ん?」
「薬の事」
「少しは、ね」

ドラッグと名の付く店に居るのだから、バイトとはいえある程度薬の知識は必要なのだ。実際、お客さんはバイトだろうが社員だろうが構わず聞いてくるし、いつもいつも資格者の先生の手が空いているわけではない。飲み合わせとか副作用とか、そんな専門的な事はまだまだ分からないけど、そうでない場合は基本的に自分たちで対処する。その方が自分の勉強にもなるし、冊子を見て文字の羅列を追うよりもよっぽど頭に入る。

「それに結構楽しいよ?成分とか効果とか覚えるの」
「お前はそういうの昔から好きだったからな」
「仙蔵はあんまり得意じゃ無かったね」

そう言って、ふと小中学生の夏休みの宿題で、生き物とかがあんまり好きじゃない仙蔵の自由研究とかを手伝っていたのを思い出した。そういえば、逆に僕は作文が書けないー!って仙蔵に泣き付いてたなぁ。読書感想文なんて、長次に本を選んで貰った上、仙蔵に事細かに内容を言ってもらったっけ。ちょっと悔しいけど、比率で言えば明らかに僕の方が仙蔵に助けてもらってた。

「ありがとう。また来る」
「うん、…あ、ちょっと待って!」
「ん?」

薬の入った買い物袋を持って帰ろうとする仙蔵に声をかけ、がさがさとカウンターの中を漁る。

「これ、この間出たばっかりのシャンプーのサンプル。仙蔵こういうの好きでしょ?良かったら使って?」
「ああ、ありがとう」
「僕も入荷した時1セット貰って使ったけど、結構良かったよ!」
「ほう、じゃあ良かったら文次郎にでも買いに来させるか」

そう言ってちらりと店内の時計に目を向ける。

「…待ち合わせ?」
「、ああ」

誰かとなんて聞かなくても、話しの流れと一拍おいて答える仙蔵にその人物は容易に推測出来る。

「また来る」
「うん。気を付けてね」

ああ、と、少しだけ早足で去って行く幼馴染に、引き止めて悪かったかなぁとちょっとの罪悪感を感じながら、僕はまた納品伝票に目を落とした。


‐終


仙蔵が文系で、伊作は理系。完璧主義で余裕な仙蔵と、不運で色々と手間のかかる伊作。得意分野も性格も正反対だけど、きっと根本は似てて、仲良しなイメージがあります。
仙蔵は伊作に手をかけていて、恋人ではないけど、友達と言うより、何かもっと近い存在だったらいいなぁ。


*2009.2.12


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