忍者のたまご‐現パロ部屋

□友達が来てくれました〜文次郎編〜
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まだまだ冬の真っ只中。でも、いつもより少しだけ暖かい、そんな日の午後。
主婦にとってはお買い物日和なんだろう。今日はいつもよりちょっと忙しい。

わたわたとレジをこなして人の波が途切れた時、「伊作」と、不意に名前を呼ばれた。
すみません、じゃなくて名前で僕を呼ぶという事は、相手は僕の知り合いと言うわけで。

「文次郎!いらっしゃい。珍しいね、文次郎がうちに来るなんて」

体を鍛えるのが趣味で、滅多に病気なんてしない(というか、風邪の1つでもひいた事があるんだろうか)文次郎は薬等に全く縁が無い。故にこんなところにいるのは物凄く珍しい光景だった。

「…仙蔵に買い物を頼まれてな。シャンプーを買ってこいと」
「シャンプー?あ、この間僕が試供品あげた新商品のやつかな?」
「おそらくそれだろう。伊作に聞けば分かる、と言われたが」
「それならこっちにあるよ!」

案内しようとレジから出ようとしたら、また少しお客さんが増えてきた。

「ああ、いい。忙しいだろう。自分で捜す」
「あ、それならその左の奥のとこがシャンプーのコーナーだから。水色のパッケージで結構広く場所取ってあるから、分かると思うよ」

店の奥を指すと、分かった、と文次郎は僕が示した方へ。僕はまたレジでお客さんの相手に戻る。
少し人が減ってきたところで、文次郎がお目当ての物を持ってレジにやってきた。


「ドラッグストアと言うから薬だけかと思っていたが、ずいぶん色んなものがあるんだな」
「うん。あっちの奥はお菓子もあるし、そっちの端にはペット用品もあるし」
「まるでホームセンターだな」
「よく言われる」

あまり来た事の無い人によく言われるセリフに、ふふ、と思わず笑いが出る。
ドラッグストアと言っても、取り扱っているのは薬だけではない。化粧品やベビー介護用品は当たり前、お菓子や洗剤などの日用雑貨、挙げ句の果てには季節の装飾品(例えば少し前ならお正月のお飾りやお年玉袋、とか)まであったりする。そんなものが入荷する度に、正直ドラッグストア企業が何を目指してるのか疑問に思う事も無くも無いが、一介のアルバイトがそんな事を気にしてもしょうがないと割り切っている。

「サポーターとかコールドスプレーはあるのか?」
「あるよ。そっちの右の棚に」
「じゃあ、今度から俺もここで買うか」
「うん、また来てね」

地元にある店で、来てくれる知り合いは多いけれど、やっぱりただの知り合いより友達が来てくれた方が嬉しいものだ。

そんなに話をしている間にもお会計は済み、ガサガサと品物を袋に詰める。仙蔵に頼まれたシャンプーとコンディショナー、それとブラックコーヒー1本。無駄なものを一切買わないのが文次郎らしい。僕なら買うものを決めていても、ついつい予定外の買い物までしてしまう。

忙しくない時ならもうちょっとぐらい話していたかったけど、あいにく今日はやっぱり忙しい。文次郎もそれが何となく分かってくれているのか、財布を懐にしまうと買い物袋を持って、また来る、と文次郎はお店を出る。その後ろ姿を最後まで見送る事無く、僕はまた増えつつあるお客さんの相手に戻ったのだった。


‐終


パシられるもんじが書きたかったからと言うのは内緒←言ってる!
早く仙さまと一緒に出してあげたいです。


*2009.2.20


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