忍者のたまご‐現パロ部屋

□フウゲンドラッグへようこそ!
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「いらっしゃいませー!」

店内に僕の少し低めの声が響く。狭い店内だ、そんなに大声を出さなくても届いているだろう。

深緑色のエプロンを身に着けて、奥の倉庫から荷物を運ぶ。――僕はこのドラッグストアでバイトをしている。都会とかにある有名なチェーン店とかではない。地元にある、そう大きくない店舗。
経営は決して順風満帆と言うわけではないみたいだけど、火の車という事もない。顔を覚えるほどよく来てくれる人もいるし、仲良くなって旅行行ってきたからと言ってお土産までくれるようなおばちゃんもいる。でも逆に、ずっと来ているんだからと無理な注文をつけるお客さんもいる。
良くも悪くも、地元密着型なお店だ。


「善法寺くん、今やってる事終わったらこの薬の在庫見てきてくれるかい?」

そう言って風邪薬の一覧表を渡してくるのは、社員の新野先生。普通はさん付けで呼ぶけれど、新野先生は資格を色々と持っている凄い人。だからみんな先生って呼んでる。

「あ、はい。後ちょっとでこっち終わりますから」

そういえば最近は本格的に寒くなって来て、目に見えて風邪薬の減りが早くなってたなぁと思いながらリストを受け取る。

今日中によろしくね、と言われ腕の時計に目をやると、六時半を回ったところだった。うちの閉店時間は八時。普通にやれば余裕で終わりそうな時間だけど、僕の場合…そうはいかない。こういう時に限ってややこしいお客さんに捕まっちゃったり、在庫数が明らかにおかしい!とかになってたりとかで時間をくってしまう事になるのだ。

とにかく、今してる作業を終わらせないと!と、気合いを入れ直して、棚に向き直る。ちなみに今は、レジの横の棚で新商品ののど飴を並べているところだ。
あ、これ美味しそう。今度買ってみよう。

最後の一個を棚に入れて、さっき渡されたリストを手に取る。
…そんな時、すいませーん、と向こう側の棚からお客さんの声がする。

「っ…、はーい!」

やっぱり、なぁ…と思いながらチラリと時計に目を遣りつつ、リストを手放して僕は声のする方へ早足で向かった。


(いらっしゃいませ!ようこそフウゲンドラッグへ!)


‐終

ドラッグストアで働く伊作が書きたくて、始めてしまいました…!
連載みたいに繋がった話にはならないと思いますが、何となく時間軸は意識して書いていけたらと思います(*^^*)


*2009.2.5


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