短編集

□Toi et Moi
34ページ/64ページ

「いらっしゃいま」
 俺は入って来た客の顔を見て、声のトーンを下げる。
「何、」
「そんな仏頂面するなよ」
 バイト君、と桐は笑いながら、カフェオレ、と注文する。左手に抱えているのはバラバラの資料。イートイン決定。
「三百二十円です」
「影月のツケで」
「出来るか」
「冗談冗談」
 六百八十円の釣りとレシートを桐に渡し、プレートにソーサーとスプーンを乗せる。注文を聞いていた八意チーフが、そこにカフェオレを置いた。
「ごゆっくり」
 俺はプレートを渡す。
「お前が言うと皮肉にしか聞こえない」
 また桐は笑って、テーブル席に向かう。四人掛けを一人で使う気だ。レポートなら自分の家でやれ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ