The Song for OWLS

□九、忍者ト侍
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 私の前に食膳があり、むすっとした顔で六助が座っている。
「何だよ、食えよ。毒なんか入っちゃいない」

 私は箸を取り、食べ始める。旨い。
「美味い」
 とそのまま感想を述べてみた。
 箸を進めながら六助の顔を見る。
「あの後、どうしていたんだ」
「あの後?」
「私と千加を残して消えた後、だ」
「ああ」
 六助はさして興味もなさそうな顔をして、懐から乾し飯のようなものを出して口に入れた。しばらく噛んで、私もその間に汁を飲み、六助はぽつりと言った。
「藍」
「姫様?…何を」
「もう済んだことだ、」
 六助は独り言つ。そして僅かに視線を上げた。
「頼み事をされた」
「何と」

「『父を殺して下さい』」

「…まことか」
 六助は頷いた。嘘など吐く必要もない。
 一体どういうことだ。


「姫様は何を知っているんだ?」
 私の知らないことを知っている。そうに違いない。そうでなければ、姫様がそのような事を言われる筈が、ない。

 
「…」
 六助は口を開きかけた。が、目が素早く動き、襖を見る。
 すっと立ち上がり、僅かに開くと、その隙間にしゅるんと狐が飛び込んできた。
「千加?」
 狐はそのまま部屋の奥まで進み、ばたりと倒れる。その姿が霞み、狐は千加となった。
 気を失っている。
 私は、先ほどまで私が使っていた寝床を広げ、千加を運ぶ。着ている物は、薄物一枚。体は軽い。
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