The Song for OWLS

□六、駆ケ比ベ
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「ここか…」
 城下町。〈かるわざ〉の提灯の下がる家。
「お侍さま」
 その家の前でじっと立つ深編笠の侍に平太が声を掛けた。
「…六助に何か用事ですか?六助は今日、城に」
 侍は笠の紐を解いた。
「その妹の方に用がある…」
 翔太郎は言う。
「待たせてもらっても良いだろうか」



「ところで、あの話は本当だったのか?」
 銀蔵が炎響に尋ねる。あの話。
「ああ…佐久の嫡子は山叉に仕えてましたよ。随分可愛がられて」
 そうだったか、と銀蔵は長い息を吐いた。
「…皮肉なことだ」
「本人は知らないんだから幸せだ。だから俺達が影で働く、それが忍だろ?銀蔵サン」
 炎響は着々と準備を進める。
「光狐は、どこ行ったんだ?」
「さあ」
「さあ、って」
「探せばすぐに見つかりますよ」



 もし私が山叉政勝を殺したとわかったら、翔太郎様は何と思うんだろう。
 もっと割り切らないといけないの?私と私を。
 私は…
「!にぃ…」
「行くぞ」
「…うん」
 屋根の上、夏の明るい宵の口。
「お前さぁ」
 背を向けて炎響が言う。
「気があるのか、翔太郎に」
「…っ、その言い方やめてよ…」
 顔が赤い。
「仕事だ。行くぞ」
 炎響はもう一度言った。
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