The Song for OWLS
□三、軽業師ノ興行
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「おかあちゃん!」
「なぁに?」
「見て!あそこ!」
子供の指差した先、人混みがある。皆、何も言わず何かを見上げている。
「わぁ…」
高い処に渡された一本の綱。
目隠しをして、その上を歩く人間。
一歩一歩進む足取りは軽い。口には笑みさえある。
無事、綱を渡りきる。
観客からは安堵の声と喝采と、投げ銭。
「どけどけっ」
突然の罵声と馬のいななきに観客は散る。そして声の主の侍は、その軽業師、六助と綱を渡り終えた千加に言った。
「お前達は軽業師の六助と千加、相違ないな」
「はい」六助が答える。
「私は山叉様の使いで参った、島田という。殿がお前達の噂を聞き、ぜひ見たいと言っていらっしゃる」
「山叉様が!?」
「三日の後、城へ参るように」
「「はい!」」
軽業師として嬉しいかぎりだ、という顔で兄妹は答えた。