The Song for OWLS
□二、賊
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〈かるわざ〉
と書いた提灯を軒先に吊す家がある。
そこに駆け込む男が一人。
「…六!おい六!」
「どうしたの?平太さん」
笑いながら迎えたのは、短髪の女。
「千加ちゃん、六助いるかい?あぁ、六」
「平太うるせえ…聞こえてる。で、何だよ」
六助は千加と同じ位の長さの髪を、眠そうに掻いた。
「ブンが…」
平太に引かれて着いたのは、古くから神木としてあったために開拓時に伐られなかった一本の巨木。見上げてもその梢は見えない。
あー、六助と千加は言った。
「ブンだ」
「ブンならいつかやると思ったけど」
平太一家の飼い猫、三毛のブン。この木の随分高いところにうずくまっている。
「あぁ、六ちゃん、ちぃちゃん」
寄って来たのは平太の母親。普段はしっかり者だが、ブンのことになるとだめだ。可愛くて仕方がない。
「ブンが…」
「大丈夫」
六助は愛想の良い笑顔を向ける。
「はい」
千加は長い縄と文鎮を六助に渡す。
「はいはい」
六助は受け取り、裸足になる。
よっと。文鎮を先端にくくりつけた縄を投げる。巨木の最も低い枝、と言っても人二人分よりも高いところにあるが、に縄はくるくると巻き着いた。
おお、とそれだけで声が上がる。
それを頼りにして、六助は木に登る。器用に枝の上に立つと、今度は枝と腕力を頼りにして、どんどん登っていく。