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□終幕のアタラクシア7
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今でも覚えている、温もり。
それはまだ自分が幼い頃の記憶。
人の行き交う大きな街並みで
はぐれない様にとそっと握られた、自分よりも少し大きな手。
・・・それは、何時の時も決して離れることのない様にギュッと、強く。
けれども優しく包み込む様な其の手は、とても温かくて安心した。
戦争で幼くして両親を失った自分。そして、彼。
それ以来ずっと、二人で生きてきた。
どんな時も強くて優しいその姿は誇らしく、憧れでもあり。
ただ一人の“兄”と呼べる存在に、縋る様に其の手を握り返した。
何よりも大切だった、唯一の存在。
だが、
もう二度とその手を取ることは・・ない。