星と恋のSketch book

□12
1ページ/3ページ


梨瑠
、こんなに長い間あんたと話さないのは初めてだな

…ずっと側に居れると思っていた

【友人】ならば。

俺は一体、どこで何を間違えたのだろうな












no, 12 群青の想い













俺の両親は
不仲で喧嘩が絶えなかった



父親も母親も互いに浮気三昧

顔を合わせば罵り言い争う

父親は世間体、母親は金、それだけで成り立っている家族


ー醜く歪んだ世界ーー


それが俺の家だった




男女の愛など夢のまた夢


無償の愛など
この世には存在しない


いつしかそう思う様になった





故に、梨瑠


あんたと出会った時も
俺はお前を利用していたのだ


己の為に…





◇・◇・◇・◇・◇





梨瑠「…ヒック…ぅ…一君…」


父親に散々罵倒された挙句、殴られた梨瑠は俺に縋りつき泣いていた



斎藤「梨瑠…、あんたには俺がついている」

梨瑠「…ぅ"…一く…ん…うぁぁぁぁぁぁん…」


コクコクと首を縦に振り、肩を震わせ涙を流す梨瑠の頭を撫でてやる




彼女には俺以外に親しい友人がいない

家にも居場所がない



俺より【可哀想な梨瑠】を見ていると何故か安心した


きっと

己の弱さの拠り所に梨瑠を利用していたのだ




…確かに…

利用していた。




…いや、利用していると思っていたのだ



あの日、



梨瑠の痣を見つけるまでは




ーーーーーーーー




梨瑠「…ここは何色かなぁ?」




空にパレットを翳して
絵具の調節に試行錯誤する梨瑠

絵を描く様を見るのがこんなにも面白いものだと彼女に教わった

真っ白な紙に別世界が描かれていく

その、描き手の思うままに色付いて行く様子には魅力される何かがあった



俺はいつも通りベンチに座り
絵具をパレットに出す梨瑠を眺めていた



そんな時ー

ふと目に止まった梨瑠の手元

良く見ると…



斎藤「む?梨瑠、この痣は…?」



パレットへと伸ばした手首にある痣

…まさか…



梨瑠「ぁ、ゃ…」
斎藤「見せろ!!」



咄嗟に隠そうとする梨瑠の手首を掴かみ、服の袖を捲りあげた




斎藤「…な……」




数えきれ無い程の無数の痣

新しいものから

古いものまで

真っ白な雪のような肌に、似合わない赤黒い痣が犇いていた




斎藤「……何故黙っていた」




自分でも驚く程の冷たい声色



梨瑠「え?」

斎藤「何故黙っていたのだ!!誰だあんたを傷つけた輩は!!!」



こんなに…

こんなに【怒り】を感じたのは初めてだ


梨瑠を傷付けられるのは耐えられんっっ!!!



それが、一番に頭を過った





だが、いくら問うても中々相手の事を吐かない梨瑠に痺れを切らした俺は彼女を睨み付けた



梨瑠「…一君?」

斎藤「父親か?学校の奴か?吐け、梨瑠」


耐え切れなくなったのか
漸く梨瑠はポツポツと話し始めた


梨瑠「…お、父さんは私の右手は傷つけない…」

斎藤「…では学校の奴か?」



俺の問いに梨瑠はコクリと頷いた



斎藤「…許さん」


立ち上り歩き出す俺の腕を梨瑠は引いた


梨瑠「待って!?私なら大丈夫だから!!」


斎藤「大丈夫ではないだろう?!実際……
梨瑠「大丈夫!!これ以上お父さんに迷惑かけたくないの!」


斎藤「…梨瑠…」


何故、あんたは
……それ程父親に拘るのだ


梨瑠「それに…中学生になれば一君も一緒の学校でしょ?後ほんの少しだもん!大丈夫!ね?」



今にも泣きそうな程、顔を歪めて精一杯笑う梨瑠

その笑顔に

………、何かが鷲掴みにされた




斎藤「…梨瑠、あんたは必ず俺が守る」




縋りつく梨瑠そう言って彼女の小さな頭を撫でた











梨瑠



…俺が、必ず助けてやる



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ