星と恋のSketch book

□09
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一体どれだけ長い間泣いたんだろ



ねぇ、一君…


私、悲しいよ?


昔みたいに…助けて…よ……













09,過去













私は独りだった


ずっと絵を描いてたし、居場所はそこにしかなかった



◇・◇・◇・◇




男徒「おい!根暗!!うぜぇから学校来んじゃねぇよ!!」




学校へ行けば

浴びせられる容赦ない罵声

振るわれる暴力

教室に蔓延る蔑んだ眼差しの傍観者




【辛い】


もう、それすら感じなくなってた








だけど







私にも大好きな人がいた




最近出来たお友達の斎藤 一君





*・*・*



梨瑠「ぁ、一君」

斎藤「今日は何の絵だ?」

梨瑠「まだ決めてないよ♪」

斎藤「そうか」





こんな私にも分け隔てなく接してくれる一君の存在は

何よりも大切なものだった






家に帰れば

お父さんと二人だけの生活

だけど父は滅多に帰ってこない

所謂独りぼっち。




……全部私の所為なんだけどね

私に…

才能がないから





**



バシッッ!!



梨瑠「…っ!!」



父「俺の娘だと言うのに…なんだこれは?!」

梨瑠「…っ、ご、ごめんなさい」








絵画コンクールの結果が悪ければ当たり前の様に振るわれた罵声と暴力

私は只、時を過ぎるのを目を硬く閉じてジッと耐えていた




どんなに成績をあげても、

お父さんは納得しない

褒めてくれない





私を…認めてはくれない






……私がお父さんの納得する絵を描く事ができないから





天才芸術家、高坂 忠臣の娘なのに…って。




そう…なんだ





私の父は芸術家

しかも並大抵の芸術家じゃない

特に絵画に関しては父が一枚絵を描くだけで雑誌やらネットやらに取り上げられるくらいだ

家にはお父さんの名が刻まれたトロフィーや、賞状で溢れかえっている




世間も初めは私の誕生に大騒ぎしたらしい




でも、出来損ないの私…







今では私はお父さんの娘を語る事さえ許されなくなってた






◇・◇・◇





ー公園ー



【描きたくない】


どんなにそう思っていても身体に染み渡った癖は簡単には抜けないわけで






私は今日も公園で絵を描いていた



??「毎日熱心だな」



声の先はもちろん一君



梨瑠「…私が描かないとお父さんが…さ」

斎藤「…そ、うか」





出会ってから毎日の様に会いに来てくれる一君





彼と出会わせてくれたお兄ちゃんにはホント、凄く感謝してる



あの日、声をかけてくれなかったら一君とも仲良くなれなかったもん






梨瑠「…ここは何色かなぁ?」



空の色を忠実に再現したくて、絵の具を調整していた



斎藤「む?梨瑠、この痣は…?」



一君はパレットに伸ばす服から出た手首にある痣に…気付いてしまった



梨瑠「ぁ、ゃ…」
斎藤「見せろ!!」



隠そうとしても手首を掴まれ長袖を二の腕まで捲り上げられる




斎藤「…な……」




無数の痣に絶句する一君





…だから見せなくなかったのに…

…こんなの、醜いでしょう?





斎藤「……何故黙っていた」

梨瑠「え?」

斎藤「何故黙っていたのだ!!誰だあんたを傷つけた輩は!!!」

梨瑠「…一君?」

斎藤「父親か?学校の奴か?吐け、梨瑠」





蒼い瞳に射抜かれる


軽蔑されると恐れていた一君の目は怒りを含むものの、優しくて暖かいいつもの目に、何一つ変わりなかった





梨瑠「…お、父さんは私の右手は傷つけない…」

斎藤「…では学校の奴か?」



コクリと頷いた



斎藤「…許さん」


立ち上り歩き出す一君を引っ張り、止めた


梨瑠「待って!?私なら大丈夫だから!!」


斎藤「大丈夫ではないだろう?!実際……
梨瑠「大丈夫!!これ以上お父さんに迷惑かけたくないの!」


斎藤「…梨瑠…」


梨瑠「それに…中学生になれば一君も一緒の学校でしょ?後ほんの少しだもん!大丈夫!ね?」


私が笑うと

一君は顔を歪めながら





斎藤「…梨瑠、あんたは必ず俺が守る」




そう言って頭を撫でてくれた









ねぇ、一君







私は殴られるより

馬鹿にされるより

存在を否定されるより








貴方を失う事が…一番怖い…





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