星と恋のSketch book
□06
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〜沖田side〜
梨瑠「…きました…」
それを発してから声も届かない程、集中して絵を描く梨瑠ちゃん
斎藤「こうなった時の梨瑠は、周りが見えていない」
沖田「あ、一君」
斎藤「梨瑠は絵を描き始めると他の何にも気付かなくなるのだ。総司、くれぐれも邪魔をするな」
沖田「そんなのわかってるよ」
下描き?って言うのかな
梨瑠ちゃんは何かを見ながら描いてるの?って聞きたくなるほどスラスラと鉛筆を走らせていた
リクエストしといてアレだけど
梨瑠ちゃんの描く、空に浮かぶ消えそうな月が
君の中にある僕の存在の様でちょっとだけ寂しいと思った
◇・◇・◇・◇
キーン コーン カーン…
沖田「あ、鳴った」
梨瑠「ふぅ、美術はあっという間ですね」
チャイムが鳴ったと同時にやっと声を発する梨瑠ちゃん
沖田「あれ?梨瑠ちゃんも帰ってきた!」
梨瑠「へ?私、ずっと此処に居ましたよ??」
キョトンと首を傾げる君は、絵を描いてる時の凛々しさは無くてただ、愛らしかった
沖田「ねぇ、梨瑠ちゃん!今日は僕と一緒にご飯食べよ?リクエスト叶えてくれたお礼にジュースくらい奢るしさ♪」
そんな事を言ってると眉間に皺を寄せ、しかめっ面な顔で僕を睨む一君がこっちに来る
斎藤「総司、梨瑠は…
沖田「あれぇ?一君はご自慢の彼女とご飯でしょ?僕、これでも梨瑠ちゃん口説いてるんだ。邪魔しないでよ」
梨瑠「ほぇ?!」
顔を真っ赤にさせてアタフタしてる梨瑠ちゃんにざわめく美術室
だって梨瑠ちゃんに興味あるんだもん
斎藤「な、何を…」
沖田「ほらほら!梨瑠ちゃん!行くよ♪」
梨瑠「きゃあ?!」
僕は梨瑠ちゃんを引っ張って美術室を後にした
**
確かに今は梨瑠ちゃんに【好き】って感情はないと思う
だけど気になって仕方ない
失恋しても泣かずに絵を描いて【感情】を【失敗】と言う君
無垢で弱く見えるのに、筆を握ると凛として真っ直ぐな強い瞳に光が灯る
もっと知りたい
もっと色んな君を見たい
好奇心が止まらない
こんな女の子は君が初めてだよ?
だからさ、一君
もっともっと千鶴ちゃんと仲良くなって梨瑠ちゃんを傷つけてよ
ズタズタに
もう、一君なんか嫌いになるくらい。
そうすれば
彼女の世界は【空】じゃなくて【月】に変わる…
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