星と恋のSketch book
□05
2ページ/2ページ
斎藤「始めまして。斎藤一です」
梨瑠「…ぁ、…は、初め…まして…」
キッチリと礼儀正しく挨拶をしてくれる一君と違って私はしどろもどろ
直ぐにお兄ちゃんの後ろへ隠れた
土方「悪りぃな、斎藤。こいつは尋常じゃねぇ人見知りなんだ。悪気はねぇし、根はいい奴だから仲良くしてやってくれ」
斎藤「いえ、こちらこそ」
土方「梨瑠、こいつは斎藤。俺のダチの弟の友達だ。無口で無愛想だが優しい奴だから仲良くしてもらえ」
な?って言いながら私の頭を撫でる、お兄ちゃん
土方「ところで斎藤、これから暇か?」
斎藤「はい、特には」
土方「俺はこれからバイトでよ。こいつを頼むわ!」
斎藤/梨瑠「はい/え?!」
じゃーな!それだけ言って微笑むとお兄ちゃんは公園を去って行った
斎藤/梨瑠「…………」
気まずい
…凄く、気まずい
何度も言うけど私は人見知り
初対面の人と和気あいあいと話す勇気なんてない
とにかく
絵を描いた
それしか私には出来ないから。
斎藤「何を描いている?」
梨瑠「え!?」
突然の問いに胸がどきりと跳ねた
斎藤「…だから何を…」
彼は言葉を途切れさせながら
私の絵を覗いた
斎藤「…空か…」
梨瑠「はい」
斎藤「あんたには、何もない普通のこの空も、その絵の様に美しく見えているのだろうな」
梨瑠「え?」
斎藤「あんたの目になってみたいものだな。そうすれば醜いモノも美しく見える気がする」
そう言いながら空を見上げては私の絵を見る一君
横顔はとても儚くて
とても悲しそうだった。
これが私と一君の出会いーー
◇・◇・◇・◇
それからの私達は良く会う様になった
正しくは、一君が私が良く絵を描く公園に来てくれる様になった
最初こそ無言だった私達だったけど、ゆっくり溝はなくなって中学になる頃にはすっかり仲良しになった
***
斎藤「…梨瑠…
梨瑠「一君?どうしたの?!」
斎藤「俺は…アイツらが嫌いだ…」
アイツ
それは恐らく両親の事
梨瑠「そっか…」
斎藤「…空が見たい…」
梨瑠「え?」
斎藤「あんたの描いた穢れのない空が…見たい…」
雨に打たれてずぶ濡れのまま私の家に来て、泣いているんじゃないかと思う程顔を歪めた一君が唯一言った言葉
斎藤「あんたの絵を見ていると…俺は何故が醜い世界から、救われる気がするんだ…」
***
私が…空ばかり描く理由
それは一君に少しでも綺麗なモノを見せてあげたいから。
彼が、私の目に写る世界が綺麗だと言うのなら、少しでも同じ景色を一君に見せたいと思ったんだ
.