星と恋のSketch book

□02
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〜沖田side〜



今日は珍しく遅刻せずに学校へ着いた


斎藤「今日は遅刻せず来れたのだな」

沖田「まぁね、たまにはね♪」

斎藤「…たまには、ではなく毎日遅刻せずに…
沖田「あー!もー!ハイハイ、わかりました!!」


風紀委員で腐れ縁の友人、一君の嫌味を交わし校門を潜る


沖田「そう言えば告白は上手く言ったわけ?」

斎藤「///////あ、ああ…」


あーあ。

顔真っ赤にさせちゃってさ


沖田「あっそ。つまんないや。おめでとー」


棒読みの祝賀を述べた


沖田「まぁ、あの子と一君はずっと一緒に居たもんね。今更恋人になっても違和感0、か」


名前は確か…


斎藤「む?話が見えないのだが」

沖田「は?ずっと一緒に居たじゃない。真っ黒の髪の、確か…えっと…」

斎藤「もしや梨瑠の事か?」

沖田「そう!そう!その子!!」




あの子、どこからどうみても一君にベタ惚れだったもんね〜




斎藤「生憎だが梨瑠は友人だ。誤解をするな、俺と変な誤解をされれば梨瑠が可哀想だろう」




沖田「は?」




…何言ってるの?




斎藤「//////っ、それに、俺の女は…雪村だけだ…」




頬を染めながら話す一君




沖田「…あっ…そ。ま、おめでとう」




それだけ言って校舎へ入った




沖田「あの子…、きっと泣いてるんだろうなぁ…」




ふと空を見上げながらそんな事を思った



別に彼女を好きとか



そんな感情があったんじゃない



ただ、いつも一君の側で



とても嬉しそうに笑う梨瑠ちゃんが何となく印象に残ってただけ





空を仰げば2階の美術室に見える人影




それは紛れもなく梨瑠ちゃんで




僕は興味本位




否、怖いもの見たさで美術室へ向かった





◇・◇・◇・◇




ー美術室ー



沖田「…お邪魔しまーす」


カラッッ…



そこにはやっぱり梨瑠ちゃんがいて



一君に会いたくないから美術室で泣いてると思ってた






…、だけど実際は違っていて彼女は絵を描いていた





僕が、…他人が近くに来た事も気付かない程、一心不乱に




そんな梨瑠ちゃんの表情を見たくて、その絵の後ろに周って彼女を見つめる





正直言うよ


女の子を見て初めて息を飲んだ






日頃、化粧っ気もないし、あまりパッとしない梨瑠ちゃん


だけど、今の彼女は前髪を上に上げてはっきりと見える凛とした横顔に、力強い真っ直ぐな瞳は



…あまりに綺麗で



《心臓を鷲掴みにされる》



正にそんな感覚だった。








僕を見ている訳じゃない



分かってる



分かってるんだけど、筆を走らす度に前へ向ける目が僕を見つめている様に見えて




胸の高鳴りが収まらなかった



突然の感情に戸惑い梨瑠ちゃんの背後に戻り




チラリと絵を覗くと



そこに描かれているのは空







悲しくて、儚くて、思わず涙を誘う様な…綺麗過ぎる空の絵。








気が付けば僕は



沖田「ねぇ、予鈴なるよ?」



梨瑠ちゃんに声を掛けていた



キーン 

コーン カーン………

 

梨瑠「…え?、あ、予鈴…」

沖田「ほらね?鳴っちゃった」

梨瑠「貴方まで遅刻しますよ?」

沖田「君の所為だよ?」

梨瑠「は?」

沖田「こんなに綺麗な絵を目の前で描かれちゃ、動けなくなるよ」



びっくりした様に目を見開いて、ゆっくり視線を絵にやると



梨瑠「でも、失敗なんです。コレ」




と、呟いた。




沖田「どこが?」

梨瑠「感情が出てます」

沖田「え?ダメなの?」





確かに凄く悲しくなる絵だけど、それは逆に才能なんじゃないの??





梨瑠「駄目と言いますか…
沖田「僕は好きだな」




梨瑠「…え?」


沖田「僕は君の絵、好き」






これが僕と、梨瑠ちゃんの出会いだった






沖田「この絵、失敗なら僕にくれる?」

梨瑠「え?…、でも」

沖田「お願い。君には失敗でも僕は気に入ったから」


絵を見て感動するなんて初めてだよ?


梨瑠「……はい、わかりました。では、放課後取りに来て下さいますか?」

沖田「うん!了解」






*・*・*



いつか、モノクロにしか見えない僕の世界も

君が創り上げる絵の様に色付く日がくるのかな?



僕の白と黒の視界に
蒼い絵の具が増えた日だった




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