あなたとわたし、100の恋

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公園の噴水の前、10時に待ち合わせ。

15分前から来ている俺は真面目か。こんなん、俺のキャラじゃねーよぃ。遅刻魔の俺が律儀に時間守るくらい、アイツは特別なんだってことなんだろう。



「あ、丸井くん!ご、ごめんね…!!」

「まだ時間になってねーだろぃ!謝る必要なんてねーよ」



テニス部のマネージャーであり、俺の彼女でもある奈々。今日もかっわい。
普段部活があって時間を作ってやれねーから、今日は付き合って3カ月にして初デート。やっべ、緊張してきた。



「今日すごい楽しみにしてたから、うれしいなあ」
「…俺もだぜぃ!」



せっかくだから、うんと楽しませてやりてぇな。
たくさん笑顔にさせてやれるといいな。




「丸井じゃないか」

「…や、柳、」
「あ、柳くん!」




笑顔が引きつった。

散歩中だという柳と鉢合わせたわけだがここは都内。俺たちが住んでいるのは神奈川だ。遠出してまで散歩しに来るやつがどこにいる。
すぐにその場を立ち去ったが、正直、嫌な予感しかしない。

そして、その嫌な予感は当たっていた。



人混みが多い都内を2人並んで歩く。
周りを見渡せば、人。人。人。
歩きずらそうな奈々は俺の後ろをちょこちょこと歩いていた。手、繋ぎてぇなあ。



「うえー人多いね。さすが都内…」
「……ん、」
「えっ、」
「はぐれたら嫌だもんな」
「う、うんっ」



くっそ、笑った顔ほんとかわいいな。
繋がれた手を離れないようにぎゅっと握りしめる。
…ちいせぇな。なんか、やっぱ女なんだな。




「あ、丸井先輩じゃないッスかー」




聞いたことのある明るい声が耳に届いた。
前方から聞こえたその声に反応して目線を向ければ、見たことのある天然パーマの後輩がいた。幻覚だと信じたい。



「奈々せんぱーい!会えて嬉しいッスー!」

本物だった。



「抱きつくな赤也。何でおまえここにいんだよぃ」
「ゲームセンター行きたくなっちゃって!!ここちょー有名なんスよ!!」
「そうなんだあ〜」



赤也が指差したゲームセンターは神奈川にも十分ある広さと規模のものだった。絶対ぇ目当てはコレじゃねぇ…。
早々に会話を終わらせ、俺たちは目的地へと急ぐ。

プラネタリウムを見ることになったけど、時間があったからショッピングモールを回ることにした。
ワンピースがほしいと言っていたから手当たり次第良さそうなものをと照らし合わせてみる。



「彼氏さんに服選んでもらうとかいいなあ〜羨ましいです」
「えっ、あ、はい…うれしいです」



はにかむように笑った。カップルだって言われるとやっぱ照れるぜぃ。
2人で笑いあって、服を見ていく。




「お!これかわいいじゃん!」

「いやー、奈々ちゃんはこっちぜよ」


―――…かんべんしてくれ。




「に、におーくん!」
「お買いものじゃきに」
「嘘つけ、てめーら何考えてんだ!!」
「嘘じゃないけぇ、まーくん怖い。奈々ちゃーん」
「抱きつくなっつーの!!!」



奈々は仁王がおしゃれなことから都内に買い物に出ていることに納得していた。
どう考えたってこの遭遇率はおかしいだろ。

レギュラー陣がを溺愛しているのは承知の上で付き合った。
だからってこんな…初デートなのに。



「今日はテニス部によく会うね」
「ほんとにな…」

頼むからもう、もうやめてくれ…。




時間になってプラネタリウムに向かった。自由席なので中心に近い席を選ぶ。



「わあ、すごい倒れるね。寝っ転がってるみたい!」



いろいろあったが、すごく楽しんでくれてるみたいだ。よかった。
楽しそうな笑いまじりの声に俺も自然と笑顔になる。

奈々を見ようと横を向いた、瞬間。

奈々もこっちを見ていて、異様に距離が近くて、薄暗くて。
え、ちょっとまって。この雰囲気は、そうだよな。していいんだよな。



「…奈々、」



頭を撫で、頬へ滑らせ。
奈々の目は熱を持って潤んでいた。スイッチが入らないわけがない。

しようとした、そのとき。

ガシッと掴まれた俺の腕は捻られ悲鳴を上げた。
驚きのあまり体を起こす。




「ブン太、ここは公共の場だよ」




黒いオーラを背負いながらにっこりと笑っている幸村くんが目の前にいた。

「せ、精市!?なんで!?」さすがに奈々も驚いていた。




「許すわけないだろ」




耳元で囁かれたその言葉に体が震える。素直に怖え。
奈々を見れば不思議そうに首を傾けていた。

…くっそ、負けねえ。
こんなわけわかんねー状況で別れるとか嫌だ。やっと付き合えたんだ、終わらせたくない。




「楽しみじゃの、プラネタリウム」

「そうですね。いい勉強になります」

「赤也。自由研究やってないならこれにすればいい」

「確かに!さっすが柳せんぱい!」

「静かにせんかたわけ!!」

「真田が一番うるさいよ」

「わー、みんな勢ぞろいだね!」




マジなんなのこいつらあああああああ!!!













初デートは危険がいっぱい
(俺の戦いはまだまだ続く…)

(ジャッカル…頼むから止めてくれよ…)
(できるわけねーだろ)




    

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