あなたとわたし、100の恋
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きょ、今日は彼女らしく大会に応援に来てみました…!!
りょ、リョーマ頑張ってるかなぁ。頑張ってるよね、選手だもんね。負けず嫌いだし絶対勝ってるよね、どんな手を使ってでも。
「奈々、」
「ひっ!」
「迎えに来てあげたのに何なのその反応」
入り口でうろうろしていたら、背後から声をかけられた。
そのことにもビックリしたし、声が頭の中で考えていた人のものだったから余計。本当に心臓が悪い。
でも振りかえって彼の顔を見たら自然に頬が緩んで。
安心したのかわからないけど、情けない顔で笑ってしまったような気がする。
「何そのゆるゆるな顔」
「リョーマに会えてよかったなぁって思って」
「…何それ、」
行くよ、とスタスタと歩き始めてしまった。
私は慌てて彼の後ろを追いかける。
は、早い!待って待って!
「試合は何時からなの?」
「まだ。前の試合長引いてるから開始時刻遅れると思う」
「そうなんだ…。あ、あのね!お弁当作って来たの!」
リョーマは歩くのをやめた。
や、やっと止まってくれた…。
私は軽く息を荒したまま、鞄の中を探って持ってきたお弁当を取り出す。
リョーマは珍しいようなものを見るような目で、私のお弁当を凝視していた。
「な、何でそんなに食い入るように…」
「…俺が言うのもなんだけど、奈々ってすっごい不器用だよね」
「あ、はい」
「作れたの?お弁当」
「し、失礼な…」
私だってお弁当ぐらい作れ…なかったけど。
でも、せっかくリョーマの彼女になって応援に行くってなったんだし。彼女らしいこと、してみたいなぁって思って頑張った。
何度も失敗したけど、でもリョーマのこと思いながら一生懸命作ったんだ。
味は…美味しくはないかもしれないけど、極々一般の味のはず。…たぶん。
「……や、やっぱりやめ「あそこ座ろう」あ、うん」
近くにあったベンチに2人で腰かけた。
リョーマはお弁当箱を手際よく取り出して開けた。
「ふーん…」と、何に対しても変わらない、いつもの反応をする。
それにどんな意味が含まれているのかなんて私にはまったくわからない。
ただ、今はその反応がものすごく怖い。
「き…汚い?」
「普通」
「よかったー」
上手くはなくても、下手ではなければ。
リョーマはあまり誉めないから、まずまずの評価をもらえたような気がする。
「あ、あのさ。もうお昼食べた?」
「まだだけど。いただきます」
「あーだめだめだめ!やっぱりだめー!」
「何で、」
手を合わせて端で摘まもうとしたところを私は全力で止めた。
ムッと眉間に皺を寄せてジトリと私の方を見る。
だって…美味しくなかったら嫌だし。
試合前にお腹壊しちゃったら大変だ。
しかもそれは私の弁当のせい。お腹壊して試合に出れないとかかっこ悪すぎる。マヌケ過ぎる。
「考えすぎでしょ。壊すような料理したわけ?」
「し、してない…と思う」
「ならいいじゃん」
「あ、」
ぱくり、と頬張った玉子焼き。
噛むにつれ、眉間に皺が寄っていく。
あ…これはダメな反応だ。
ゴクリと飲み込んで、彼は険しい顔のまま呟いた。
「…あっま、」
「た、食べないで!お腹壊すから!」
リョーマ、甘いのダメなのに…! やっぱり砂糖入れすぎちゃったのかな。
私の甘いとリョーマの甘いは天と地の差があるくらい違うから…!
私がお弁当を取りあげようと手を伸ばせば、ひょいっと避けられてしまった。
「……別に食べないなんて言ってないじゃん」
そのまま、バクバクとものすごいスピードで食べて、お弁当箱はカラになった。
泣きそうな私に対して、リョーマは飄々とした態度で立ち上がる。
「何泣きそうな顔してるの」
「だ、だって…」
お腹壊す…と呟けば「またか」というように呆れたため息を吐き出していた。
リョーマは私の前髪をサラリとわける。
「大丈夫。これで俺、余裕勝ちだから。見てて」
ちゅ、と寄せられたくちびる。
額に熱が一気に集まった。
玉子焼きは恋の味
(越前、ベタ惚れっすね〜)
(ふふ、そうだね)
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