短編

□溢れるほどの愛を
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『はじめまして!わたし葵。あなたは?』



親に連れられて行ったつまらないパーティー。


壁の花と決め込んでいつものようにふてくされていた俺。


そんな俺に笑いながら話しかけてきた葵。


なぜか君だけがキラキラしていて。


つまらない世界に色がついた。


だけど俺は馬鹿だから葵をたくさん泣かして傷つけて。


それでも側にいてくれて。


ああ、俺はなんて幸せなんだろう。


隣に眠る葵の朱茶の髪を掬い口づける。


この髪すら愛おしい。



「ん……レン?起きたの?」



「ごめんよ、葵。起こしたかい?」



「大丈夫。レンは寝なくて平気?明日も撮影でしょ」



「大丈夫さ」



葵の藍色の瞳に俺が映る。


どうしたらこの愛しさが伝わる?


何度この柔らかな躯をかき抱いても満足できない。


職業柄、他の女と噂になることも多い。


それでも笑ってわたしはレンを信じてるからと言ってくれる葵に俺は何を返せる?



「ふふ。眉間にしわ寄ってるよ?」



「葵が可愛すぎるからさ」



「もう。レンはお世辞が上手」



ふたりで額を寄せ合って笑う。


この狭いベッドの上という空間だけ時間が止まってしまえばいい。


2人だけの世界になってしまえばいい。


そうすれば葵を悲しませることなんてない。



「レン。わたし幸せだなあ。目を覚ましたら隣に大好きなレンがいるんだもの。すごく幸せ」



葵がそう言って俺の一番好きな笑顔を見せてくれる。


たまらず葵を抱き寄せた。


小さな手が俺の背中にしがみつく。


好きだ。


好きで好きでたまらないんだ。



「レン、わたしは大丈夫よ。だってレンを信じてるもの。レンは頑張り屋さんで真面目だから。無理しちゃいやよ」



身体に染みていく葵の言葉。


世界で一番素敵な言葉。



「愛してるよ、葵」



「わたしも、愛してる」



愛してるなんかじゃ伝えきれないことなんて解ってる。


でも俺は今日も君に愛を囁く。


それが俺にできること。






2012/5/25
うたぷり発売おめでとう!


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