世界一Novel

□キミイロ
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家に帰りたくない。
そう感じたのは、つい最近の出来事だった。

正確に言うと、家に帰りたくないわけではない。
むしろ今すぐ家に帰って、ベットにダイブして溜まっている有給休暇をつかって、1週間くらい家でゴロゴロしたいものだ。
家に帰りたくない原因は9歳年下の恋人、雪名にあった。いや、雪名のことが嫌いになったとかそーゆーわけではないのだが・・・

ことの発端は一昨日のこと。
雪名はどうやら学校の友達との旅行でロンドンへ行く(前に言っていた、好きな画家の絵を見に行くらしい)のだが、その期間がちょうど校了明け・・・つまり自分がフリーになる期間旅行に行ってしまうのだ。しかも、たちの悪いことに1週間も。
要するに雪名が帰ってくる頃にはまた自分が忙しくなり、また会えなくなってしまうのだ。

(前にあったのいつだっけ・・・声はいつも聞いてるけど・・・結局このこと言われたのも留守電だったし・・)

そんなことも思い出せず悶々とする。
雪名は電話をすると言ってくれたが、なんせ時差は9時間。
こっちが起きてる時にあっちは寝てて、あっちが起きている時にこっちは寝てるのだ。
(雪名は「木佐さんが起きてる時に絶対電話します」と言ってくれたが、「そんなことしたら余計会いたくなるから止めろ」と言ったらすぐに「わかりました」と言ってくれた)

本題に戻ろう。
なぜ自分が家に帰りたくないのかというと、雪名の匂いが原因だった。
雪名の匂いが自分の部屋に埋め尽くされているのだ。
キッチンもリビングも、風呂場も脱衣所も。もちろんベットだって。
枕なんか、雪名の匂いがして昨日は快眠できなかったのだ。

だから家に帰りたくない。
雪名の匂いで侵食されてしまったあの家に。
雪名の匂いがして、いるはずのない幻影がちゃっかり現れてしまったり。
あいたくてあいたくて、おもわず涙がでちゃったり。

きみのいろに染められた僕は、もう君なしでは生きていけない。
だからずっと側にいて・・・
この手を握りしめててほしいんだ


君が帰ってくるまであと4日・・・
それまで僕は君のことでも考えていようかな



とか。
fin.

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