灰色days
□第1話【貴方と悩み事】
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「私の曲を歌ってくださいっ!!」
今日も今日とて先輩である黒崎蘭丸に音源を差し出す。
端から見れば中学生の告白かと思われる光景だ。
いや、今の中学生ならもっと上手く告白するだろう。
「無理だ。つーか、しつけーよ」
蘭丸はあからさまに嫌そうな顔をする。
「わかってます! きっとそういう反応をされるだろうと予想していたので!」
顔を上げ、キリッとして蘭丸を見た。
「チッ……うぜぇ……」
ため息をつかれ、蘭丸は歩いて行ってしまう。
「……」
うざい、と言われたのはおそらく聞き違えではないだろう。
《……わかっていても好きな人にそんなことを言われると悲しいんだけどなぁ……》
受け取ってもらえなかった音源を見て苦笑いをする。
――いつものこと
そう、無理矢理割り切って顔を上げた。
今度はまた、別の曲を作って彼に持って行く。
我ながらストーカーの様だと思うが、こうでもしないと彼には歌ってもらえないだろう。
《絶対、負けない!》
決意を新たにして寮へ向かった。
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